43 王将飾り・ツインテール・アイス

【王将飾り】


 メイドさん、テレビの脇に置かれた王将を見ながら、五月先生に聞きました。

「あれは五月様が買ったのですか?」

「いや、親父」


「ずっと疑問だったのですが、王将の飾り物ってどんな意味があるのでございますか?」

「んー? 福を招く縁起物だ」

「はぁ、招き猫と同じなのですね!」


「まぁ、そうだな。うちには必要ないがな」

「なぜでございますか?」

「なぜって、うちにはお多福がおる」


「えっ? どこに?」

「いや、何でもない……」

 メイドさん、まったくわかっていませんね。




【ツインテール】


 メイドさんが外出から帰ってきました。

 書斎に入ると、五月先生に言いました。

「五月様、見て見て。美容師さんがぁ、ツインテールにしてくれましたです」

「ん? あぁ」


「可愛いでしゅか?」

「ん? あぁ」

 五月先生は振り向きもせず、まったく気のないお返事です。


「五月様は……わたくしに興味ないのでございますね……」

 メイドさん、しょんぼりして出て行きました。

 いつもの引っ詰め団子でいいんじゃないですか。


「ん? 今何か話しかけられた?」

 五月は〈脳内執筆集なう〉




【アイス】


 朝から蒸し暑い一日です。

 ガサゴソ、ガサゴソ……。

 メイドさん、冷凍庫を開けておやつを確認しています。


「五月様、あずきのアイスとソーダのアイス、どちらがよろしいですか?」

「メロンのアイスが食べたい」

「いっ? メロン味はございません」


「買ってきて」

「もう、子供みたいなことおっしゃらないでください」

「じゃあ、どっちも食べたい」

 メイドさん、お台所に戻ります。


「ほんとに、舌はお子ちゃまなんだから……」

 メイドさん、あずきとソーダの二本を持って、書斎へUターンです。

「食べてるうちに、片方溶けちゃいます……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る