28 アイロン・天ぷら①・天ぷら②

【アイロン】


「五月様のシャツにアイロンかけましょ」

 暑いのにたいへんですが、頑張るメイドさんです。

「パリパリのシャツは気持ちいいですものね」


 チーン……。

 お台所でオーブンが鳴りました。

「あ、パンが焼けましたです」

 メイドさん、アイロンほったらかして行ってしまいました。


「ん〜いいにおい。五月様に喜んでいただけますね」

 ちょっとちょっとメイドさん、こっちではよくない臭いです。


「……って焦げ臭い!」

 あーあ、やっちゃいましたね。

「シャツも焼けました。五月様に怒られます……」

 アイロンの後くっきり。




【天ぷら①】


 メイドさん、お夕飯の支度をしています。

 珍しく、五月様もお手伝いです。

「五月様、今夜はヒロシが送ってくれた野菜で天ぷら揚げます」


「野菜以外は?」

「エビにキス、イカです」

「味は?」

「天つゆと大根おろし、抹茶塩も用意いたしましょ」


「本格的だな。あとさー、タコさんウィンナーも揚げて」

「はいはい、かしこまりましたです」

 五月先生の舌はお子ちゃまです。

 メイドさん、冷蔵庫を確認します。


「五月様、カニカマでもよございますか? ウィンナーないです」

「やだ。買ってきて」

 五月先生、ご自分で行きましょ。




【天ぷら②】


「五月様、今夜はおそばとおうどん、どちらがいいですか?」

「んー、両方」

 五月先生、欲張りです。


「かしこまりましたです」

「昨日の夜が天つゆと抹茶塩、今日の昼が天丼、最後は天そばと天うどん……」

 昨夜はたくさん天ぷら揚げましたものね。


「最後は天そばと天うどん……。もう聞いただけでお腹いっぱい!」

 五月先生、太鼓腹をさすります。

「五月様、天ぷら残しちゃダメですよ」


「ケプー……」

 だったら両方なんて言わなきゃいいのに。

 聞いてるだけでケプーです。

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