26 里帰り④・里帰り⑤・里帰り⑥

【里帰り④】


「がはは、愛糸めいとがメイド」

 ヒロシくん、まーだ笑っています。

「同じことを、何回言うんだこやつ……」

 めいとさん、ふくれています。


「まぁ、頑張れよ」

「へ?」

「そっか、おじちゃんの命日か」

「うん」

 ヒロシくん、少し顔つきが変わりました。


「いつ東京帰るんだ?」

「明日」

「そっか、朝、帰る前に野菜届けてやるよ」

「う、うん」

 めいとさん、ちょっと戸惑っています。


「じゃあ、明日な」

 ヒロシくん、颯爽と去っていきました。

「ヒロシ、なんか意外といいやつ?」

 そうなんですかね?




【里帰り⑤】


 畑道を抜けると垣根があって、その向こうに墓地があります。

 めいとさん、父君のお墓の前です。

「父様、お久しゅうございます」

 お花とお線香を供え、手を合わせます。


「五月様はときどきお優しくて、愛糸は幸せに暮らしております。どうぞご安心を」

 めいとさん、ときどきって……。

「母様はめんどくさいからと行かないと言っておられました」

 きっと、しょっちゅういらしているのですよ。

『あやつはいい。それより、なんだ……ヒロシとの祝言の知らせじゃないのか……』

 え? 父君?


 ゾクッ!

「な、なんか悪寒が……」

 めいとさん、身震いです。


『東京でいい相手見つけてこい』

 父君、それもちょっと無理かと……。




【里帰り⑥】


 次の日、めいとさんが東京に帰る日の朝です。

「よう愛糸、野菜持ってきたぞ」

 ダンボールいっぱいに野菜を詰め込んで、ヒロシがやってきました。


「あ、うん、ありがと」

「いっぱい持ってけ」

「お、重い……」

「お前ちっこいからなぁ。がはは」

「ちっこい関係ない」


「そうだよな、持ってけないよなぁ、ちっこいから」

 ヒロシ、ちっこいちっこい何回言うんでしょう。

 めいとさん、ちょっとおかんむりです。


「そうだよな、お前ちっこいからな、送ってやるよ」 

「やっぱ嫌いだ!」

 ヒロシは人の話を聞きません。

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