37 自転車・プリンどこ?・プリンあった!

【自転車】


 五月家には、五月先生の自転車しかありません。

 メイドさんは、どこへ行くにも歩きです。

「メイド、自転車乗れるか?」

 五月先生が聞きました。


「乗れますとも!」

「三輪車じゃなくて?」

「ちゃんと二輪車です!」

「補助輪なしで?」

「失礼な……」

 メイドさん、ちっこくても自転車には乗れるようです。


「お前が自転車に乗ったら、カゴを山盛りにして転けたり……」

 やりそうです。

「この辺りは車の量も増えたしな……んーやっぱダメだ」

 五月先生、メイドさんを心配しているようですね。


「嬉しいんだか嬉しくないんだか……」

 嬉しがって差し上げて。




【プリンどこ?】


 五月先生の舌はお子ちゃまです。

 お好きなものは、クリームソーダにタコさんウインナー。

 焼き魚や煮っころがしも好きですが、ハンバーグやカレーを喜びます。

 小学生並みです。


 ガサゴソ、ガサゴソ……。

 買い物袋を広げているメイドさんの横に来て、五月先生、おやつの催促です。


「プリン食ーべよ。買ってきてくれただろ?」

「はいはい。買ってありますよ……って、プリンどこ?」

「買い物の途中でどこかに置いてきたのではないか?」

「いえ、そんなはずはないと……」


 買ったはずのプリン、どこにいったのでしょう?

「もういい、ようかん食べるから……」

 五月先生、残念!




【プリンあった!】


「あの資料、どこにやったかなぁ?」

「五月様、探し物でございますか?」

「カクテルの資料。印刷したやつ」

「それでしたら、本棚の下の引き出しの中に……いっ!」

「どうした?」


「プリンあった……」

「なぜここに?」

「自分でもわかりません……」


 昨日のことです。

 買い物から帰ったメイドさん、プリンを持って書斎に直行しました。

「五月様、プリ……あ、頼まれていたシャツにアイロンかけなきゃでした」

 メイドさん、本棚の下の引き出しからシャツを一枚取り出しました。

 代わりに、プリンをしまっちゃいました。


「ん? 今メイド来た?」

 机に向かっていた五月先生、気配を感じ振り向きましたが、メイドさんはもういません。

 で、資料とシャツとプリンが一晩、引き出しにしまわれたのでした。

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