19 すみれ・草むしり・口笛

【すみれ】


 五月先生とメイドさん、家の周りの道路のお掃除をしています。

「五月様、見て。こんなところからすみれの花が……」

 道端のコンクリートの隙間から葉と茎を伸ばし、すみれが咲いています。


「おぉ、たくましいな。これは日本すみれだな。」

「草木の生命力は強いのでございますね」

 ほんとですね。


「あぁ、人間も負けていられないな」

「あい!」

「大丈夫、お前は充分たくましいぞ……」

 ええ、ほんとに。


「これは抜かないでおきましょうね」

「ああ」

 五月家の庭にも、すみれがたくさん咲いています。




【草むしり】


 家より広い五月家のお庭、だいぶうっそうとしてきました。

 「庭の草むしりしよー」

 五月先生、虫除けスプレーをたっぷり振りかけ、長靴履いて庭に出ました。


「わたくしもお手伝いします!」

「お前はいーよ」

 メイドさん、手袋・長靴・帽子の重装備です。


「ヒェ〜、虫!」

「……」

 そりゃあ、外ですから。

「シェ〜、トカゲ!」

「……」

 そりゃあ、庭ですから。

「ギャ〜、ミミズ!」


「うるさいっ!」

「や、やめます……」

 それがよろしいかと。




【口笛】


 ピューピュピュッピュー

「五月様口笛お上手でございますね」

「そうか?」

 ピューーー

 ピューーー

 ほんとにお上手です。


「わたくしも」

 シュ〜フュヒュッヒョ〜

 メイドさん、全然吹けていません。

「お前は吹けなくていいと思う……」

「なぜでございますか? 吹けるようになりたいでございます」


「ん」

 五月先生、メイドさんに鏡を手渡します。

 メイドさん、鏡を見ながら吹いてみました。


 シュ〜フュヒュッヒョ〜

「ブ、ブチャイク……」

 吹けなくていいと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る