23 人気スポット・東京駅②・エプロン

【人気スポット】


 東京駅に来たおふたり、次はショッピングです。

「ここが新しくできた商業施設だ」


 いえ五月先生、新しくはないです。

 三年前からありますから。

 ところで、お買い物の目的は何なのでしょう?


「駅の真ん前にあって、便利でございますね」

「うむ。さすが人気スポット、人が多いな」

 メイドさん、目移りしています。

「ファッションも雑貨もレストランも、何でもありますね」

「……」


「五月様? どこ行かれました?」

 五月先生いません。

「は、はぐれた……」

 この人混みの中、おふたりは再び出会えるのでしょうか……。




【東京駅②】


「駅舎、モダンで素敵な建物ですね」

「ああ」

 復元された赤レンガの駅舎を、ビルの屋上から眺めています。

 おふたり、無事に出会えたようですね。


「でも……背景のビル群にちょっと違和感が……」

 無機質なビルが立ち並んでいます。

「都心ゆえの宿命だ」

「そうでございますね……」


「古き良きものと近代的なものとの融合だ」

「そうでございますね……五月様、ところでその紙袋は?」

「気にするな」

「じ〜」


「さ、帰るぞ」

 東京駅の旅、これにて終了です。

「五月様、ICカード買ってください」




【エプロン】


 五月先生、右手に紙袋を提げています。

 お台所のメイドさんに声をかけます。


「ほらメイド、これ、やる」

「この袋は昨日はぐれたときの……」

 メイドさんがじーっと見ていた袋です。


「新しいエプロンだ」

「ご、五月様、わたくしのために」

「この間、ケチャップ飛ばして汚しただろ」

「う、嬉しゅうございます。五月様ぁ〜、ありが……」


「気にするな。お前の給料から天引だから」

「ちっ、そんなこったろうと……」

 五月先生、案外けちんぼなんです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る