水無月

24 アルバム・野球ゲーム・お顔恐い

【アルバム】


 ガタン、ガタンバタン……。

 メイドさん、なにやらお部屋でドタバタしています。


 シーン……。

「メイド、部屋の片付け終わったか? なんだ全然じゃな……」

「……」

 片付けを始める前より散らかっています。


「何見てる? ほー、アルバムか」

「あい……」

 子供の頃の写真です。

 メイドさんの両側には、ご両親が写っています。


「もうすぐお父上の命日か。里帰りするか?」

「良いのでございますか?」

「ああ、行っといで」

「あいっ」




【野球ゲーム】


 ガタン、ガタンバタン……。

 五月先生も、滅多に上がらない二階の押入れの片付けを始めました。

「メイド、野球のゲーム出てきた」

「子供の頃遊びましたが、良い思い出はございません」

「ん?」

「幼馴染みのヒロシに、一回も勝てなかったのでございます」


「やってみるか?」

「あい、良いでございますよ」

「第一球」

 メイドさんの先行です。

 スカッ……。

 空振りです。


「第二球」

 スカッ……。

「第三球」

 スカッ……。


「三球三振、勝てないのも当然だな……」

「・・・」

 この後野球のゲームは、再び押入れの奥にしまわれましたとさ。




【お顔恐い】


 メイドさん、東京土産を持って、お里帰りです。

「五月様、お顔恐いです。ひとりでお留守番だからですか?」

「別に」

 五月先生、ほっぺがふくらみ気味です。


「ほら、笑ってです。笑っているほうが、幸せになれるですよ」

「別におかしくないから笑えない」


「でしたら、脇コチョコチョしちゃうでありますぅ〜」

「やめーいっ! へへへ……」


「ほら、笑ったでございます。では、行ってまいります」

「くそっ」

 まあまあ、五月先生。

 ご自分から言い出したのですから、気持ちよく送り出してあげてください。

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