10 ベッド・気楽・念

【ベッド】


 五月先生、書斎でお仕事です。

 と思ったら、真っ白な原稿用紙の画面を前にして、なにやら雑誌をめくっています。

「ベッドいいなぁ、欲しいなぁ」


「通販雑誌でございますか?」

 メイドさんがお茶を持ってきました。

「子供の頃はセミダブルで寝てたんだ。それが今じゃ煎餅布団……」

 アンド万年床。


「五月様、これでは当分無理でございますね」

 メイドさん、白紙原稿を指差します。

「あっ?」

 五月先生の表情が変わりました。


「やべ……」

 メイドさん、早いとこ退散したほうが良さそうですよ。




【気楽】


 テッテッテッテッテ……。

 お庭を猫が横切っていきます。

 野良猫ちゃんでしょうか。

 首輪をしていません。


「猫はいいですねぇ、気楽で」

「……」

 五月先生、縁側でうつらうつらです。

「日向でお昼寝。うらやましいですよねぇ、気楽で」

「……」

 次はこっくりこっくりです。


「公園で食べ物もらって」

「……]

 最後は寝そべって。

「五月様?」

 スピー……。

 五月先生、マジ寝です。


「こやつが一番気楽だ」

 メイドさん、言葉遣いが……。

 テッテッテッテッテ……。




【念】


「うー」

 五月先生、原稿用紙の画面の前で唸っています。

 メイドさん、その様子をこっそり覗き見しています。

「五月様、またネタに行き詰まったようでございます」

 そのようです。


「いいネタ出てこい! の念を送りましょう。」

 念?

「ンンン〜〜〜、バッ!」

 なんですか? それ。


 ゾクッ!

「ん? 悪寒」

 五月先生の背中が一瞬震えたような……。


「早く売れろよ! の念送っちゃった……」

 それは震えます。

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