21 飛行船・難しい漢字・虫がいっぱい

【飛行船】


 メイドさん、先刻からずっと空を眺めています。


「五月様、飛行船です!」

 晴れ渡った空の上、白い飛行船が飛んでいます。

 ゆっくり、ゆっくり、進んでいます。


「どれ」

「ほら、あそこでございます」

「ほー、なーんかのどかだなー」


「空を飛ぶってどんな気分でしょう?」

「さぞ気持ち良かろう」

「わたくしも浮かんでみたいです」


「うーん。風の向くまま、気の向くまま……うらやましい……」

 五月先生、やけに言葉に重みが……。

「五月様、五月病?」




【難しい漢字】


「五月様、ゆううつって漢字で書けますか?」

 メイドさん、唐突な質問です。

「誰に言っている。私は曲りなりにも作家だぞ!」

 ですよねぇ〜。


 〈憂鬱〉

「わぁ、すごいです!」

「へへん」

「じゃあ、りんごは?」

「朝飯前」


〈林檎〉

「さすが五月様」

「うむ」

「じゃあ、最後はばら」


「よし。くさかんむりに……くさかんむりに……ん?」

 五月先生、そこは書けましょ……。

〈薔薇〉です。




【虫がいっぱい】


 五月家の庭には、いろんな虫が飛んできます。

「五月様、最近お庭に、今まで見たことない虫がいっぱいおります」

「へー、どれ?」


「これでございます」

 一センチくらいで、お尻のほうが黄色いいがいがになっています。


「うーん、知らんなぁ……」

「毒虫じゃなければいいのですが……」

 おぅ、こ、これは……。


「図鑑持ってこようか?」

「虫は大嫌いです!」

 うん、てんとう虫の幼虫です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る