04 木瓜の花・ハヤブサ①・ハヤブサ②

【木瓜の花】


 家より広い五月家の庭には、様々な草木が植えてあります。

 今は、赤いお花が満開です。


「五月様、きれいなお花でございますね。名前は何でございましょう?」

「お前」

 ん? おまえという名の花はないでしょうに。

「それ、どういう意味でございますか?」

「待ってろ」


 ドサッ!

 五月先生、花図鑑を持ってきました。

 メイドさん、花と写真を見比べながらページをめくります。

「赤くて小さめ、枝がこんなで……あ、ございました!」

「なんて名だった?」

「……木瓜(ボケ)……」


「へっへっへっ」

 意地悪五月です。

 メイドさん、ほっぺを膨らませています。

「ぶー』




【ハヤブサ①】


 五月家の庭に、一羽の鳥が舞い降りました。

 凛とした姿で、洗濯竿に留まりました。

「五月様、たいへんでございます!」

「ん?」


「に、庭にハヤブサが!」

「ほー、珍しいな」

 確かに、ハヤブサが飛んでくるなんて、全くもって珍しいことです。

 こんな間近で初めて見ました。


「ご、五月様、ハヤブサがは、鳩の羽をむしっております!」

「弱肉強食、自然の摂理だ」

 五月先生、やけに落ち着いています。


「そ、そういうことではありませぬ……」

 毎朝つがいでくる鳩でしょうか、可哀想なことです。




【ハヤブサ②】


「ほ、保健所に、保健所に電話いたします!」

 メイドさん、慌てております。


 トゥルルル〜、トゥルルル〜……。

 カチャ……。

「あ、あの、庭にハヤブサがいるのですが……」

「申し訳ないですが××事務所へおかけ直しください」


 トゥルルル〜……。

 カチャ……。

「あ、あの、庭でハヤブサが鳩の羽をむしっているのですが……」

「申し訳ないですが、ハヤブサは害鳥登録されていませんので」

「ハトは?」

「ご自身で処理を」

「・・・」

 ガチャン!


「五月様ぁ〜、は、鳩ぉ〜」

 そういうことですね。

 五月先生、お片づけお願いします。

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