05 お買い物券・たんぽぽ・兜

【お買い物券】


 メイドさんがお買い物から帰ってきました。

 なんだかお顔がにやけています。

「やったー、やったでございますよ、五月様ぁ〜」

「どうした? そんなに浮かれて」


「パン屋さんのお買い物券が当たりましたです」

 倹約家のメイドさん、それはそれは、さぞかし嬉しいことでしょう。

「これは、いざという時に使いましょう」

 メイドさん、お買い物券を引き出しにしまいます。


「そうやってしまい込んで、いつも期限切れにするじゃないか!」

 いっつもそうです。


「今すぐ行ってこーい!」

「あい〜〜〜」

 メイドさん、パン屋さんにダッシュです。




【たんぽぽ】


 五月先生とメイドさん、ふたりでお散歩です。

 五月家のご近所は比較的緑が多い地域で、道端にもいろいろな草花が生えています。

 春はピンクや黄色、白に紫、色とりどりです。


「五月様、こんな道端にたんぽぽ綿毛が」

「ふむ」

「ふ〜していいですか?」

「風に乗って、新しい土地に幸せ運ぶんだろうな」

「五月様、詩人です」


「私が詩人なのではない、お前がたんぽぽ綿毛なんだ」

「ニャハ〜」

 五月様、何か企みでも?

 アワアワシュワーのおねだりですか?


「お前がいれば笑いが絶えない」

 あ、なるほど。




【兜】


 ガタガタ、ガタン……。

 ガタガタ……。

 五月先生、滅多に上がらない二階で、何か探し物のようです。

 押入れの奥の奥から、大きな桐の箱を見つけ出しました。

「ふぅ、あった」


 五月先生、書斎の隅で中身を取り出します。

「五月様、それ何でございますか?」

「兜を出そうと思って。何年ぶりだろ、飾るの」

 そういえば、もう直ぐこどもの日です。


「……」

「お前のひな人形も、実家から送ってもらったらどうだ?」

「……」

「なんだいないのか……もしかして兜の中?」

 いくらなんでも、そんなに小ちゃくはない。 


「五月様、お昼おうどんでよございますか?」

 メイドさん、お台所でした。

 兜には、全く興味ないみたいです。

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