皐月

06 ボタン付け①・花占い①・帰宅

【ボタン付け①】


 五月先生、しょんぼり顔で書斎から出てきました。

「お気にのジャケット、ボタンが取れた。メイド、付けて」


 ジャケットを受け取ったメイドさん、満面の笑みです。

「心配ございません。わたくし、お裁縫は得意であります」


 メイドさん、部屋から箱を持ってきて、早速お裁縫です。

「チクチク、イッ……。チクチク、イッ……」

 イッ?

 メイドさん、なんだか変な掛け声ですね。


「五月様、ボタン付け終了いたしました」

「ん、クローゼットに入れといて」

「あい」


ー後日に続くー




【花占い①】


 縁側に、メイドさんがちょこんと座っています。

 何をしているのでしょう?

「…る、来ない、来る、来ない……はぁ」

 小さな背中が、なんだか哀愁を帯びています。


 五月先生がいらっしゃいました。

「おっ、花占いか。何が来る、来ないなんだ?」

「な、何でもございませぬ」

 あら、そっけないお返事です。


「偶数の花びらじゃ、来るから始めたら来ないで終わるに決まってるだろうよ」

「あ、そうか」


「何枚あるかわからないくらいの、もっと花びらが多い花でやるもんだ」

 メイドさんは、算数が苦手です。


ー後日に続くー




【帰宅】


 メイドさんがお出かけから帰ってきたようです。

「五月様ぁ、ただいまですぅ〜」

「……」

 返事がありません。


「五月様? どちらですか?」

「……」

 居間に五月先生はいないようです。

「お仕事場ですか?」

「……」

 いません。


「お庭?」

「……」

「おトイレ?」

「……」

「五月様いない……一人はイヤだぁ〜〜〜」

 メイドさん、泣き出してしまいました。


「出ていけない……」

 五月先生、台所で盗み食い。

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