15 におい①・におい②・におい③

【におい①】


 くんくん、くんくん……。

 家中に、なにやら普段嗅ぎ慣れない匂いが漂っています。

「くさい、ガス漏れだ!」

 五月先生、慌てています。


 バタバタバタ……。

「メイド大丈夫か?」

「ほぇ? どうなさったのでございますか? 五月様」

「なに呑気なことを! ガスが漏れてるぞ!」

「はぁ? ガス?」

 どうやら、五月先生の早とちりのようです。


「なら、これ何のにおい?」

「干し椎茸をもどしてますけど……」

 メイドさん、ガス台に置いた鍋の蓋を外しました。


「くさっ」

 これは溜りません。




【におい②】


 もどし椎茸は美味しいのに、においはものすごかったです。

「五月様もわたくしも、においには敏感なのでございます」

 実はわたしも。


「もどし椎茸もですが、玉ねぎを刻んだあとの手のにおいが嫌いです……」

 うんうん。

 わかります、わかります。

 何度洗っても、しばらく落ちませんよね。


「でも、五月様玉ねぎお好きですし、わたくし我慢するのでございます!」

 ほぉ、五月先生は玉ねぎがお好きなのですか。


「いや、そんな好きじゃないけど……」

 ですって、メイドさん。




【におい③】


 強いにおいが苦手な人、多いのではないでしょうか。

「わたくしの最も苦手なにおいは、マニキュアなのでございます」

 嗅ぎすぎると、頭がクラクラしますよね。


「美しい爪には憧れますが、あのにおいはどうにも鼻が受け付けないのでございます」

 五月先生、メイドさんの独り言を盗み聞きしています。


「まじっ?」

 先生、なにやら焦っていますね。


「今年の誕生日プレゼント、マニキュアにしようと思ってたのに……どうしよう」

 あーあ、残念。

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