41 ヒロシ①・ヒロシ②・ヒロシ③

【ヒロシ①】


 ピンポ〜ン……。

 夜遅い時間ですが、五月家に急なお客様のようです。

「あ〜い、どちら様?」

 メイドさんがドアを開けると、そこにいたのは……。

「よう愛糸めいと、来てやったぞ」

「げっ! ヒロシ」


 五月様も出迎えます。

「きみがヒロシ君か。よく来たね」

「どうも、初めまして。お邪魔しやーす」

 いきなりタメ口?

 もう仲良し?


「ヒロシくん、今夜はうちに泊りなさい」

「いーんすか?」

「一泊二千円」

「え?」

 ヒロシくん、目が点です。


「さすが五月様!」

 お金は無いより、あったほうがいいのです。




【ヒロシ②】


 結局、二晩泊まったヒロシくん、なにやら五月先生と盛り上がっています。

「それでねヒロシくん、それがああなって……こうなんだよ」

「そうなんすかーがはは」

「だろー? まったく、笑っちゃうよなぁ。あはは」


 その様子を、メイドさんがこっそりうかがっています。

「あのふたり、すっかり意気投合して」

 メイドさん、ちょっぴりジェラシーです。


「夕べも楽しそうにおしゃべりしていました」

 メイドさん、ふたりの前に飛び出しました。


「わたくしもかまって!」

 どうか、かまって差し上げてください。




【ヒロシ③】


「ヒロシくんと出かけてくる」

 五月先生、メイドさんを残してお出かけです。

「いってらっしゃいませ……う〜」

 メイドさん半べそです。


 数時間して、おふたりが帰ってきました。

「ただいま。ほい、これやる」

 ヒロシくん、メイドさんに大きめの包みを差し出します。

「何?」

 ガサガサ……。

「俺、今日帰るわ」

 ガサガサ……。

 包んであったのは、おしゃれ長靴でした。


「畑が恋しくなったから。お前も仕事頑張れよ」

「ヒロシ……ありがと」

 良いとこありますね、ヒロシくん。


「メイド、似合うじゃないか」

「あい。大事にします」

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