02 ふとん②・英語・カエルの合唱

【ふとん②】


 干からびた焼き芋をゴミ箱に捨て、メイドさん、気を取り直してお布団干します。

 バサ、バサバサバサ……。

 再び押入れから何か出てきました。


 大量の雑誌が落ちてきたのです。

「今度はなんでございますかっ!」

 メイドさん、毛布を下ろして片し始めます。

 表紙には『メイドのきもち』とありました。


「創刊号、『メイドのきもち』No.2、3……。五月様、そんなにもわたくしのことを」

 どこかで聞いたようなタイトルですね。

 メイドさんの表情は、なんだかとても複雑です。


「メイドぉー、毛布まだかぁー?」

 メイドさん、足取り重く二階へ上がって行きました。




【英語】


 五月先生とメイドさん、街へお買い物に来ています。

 海外ブランドのおしゃれなお店が並んでいます。

「Excuse me」

 正面から歩いてきた外国人に、声を掛けられました。

「いっ! わたくし英語はダメでございます」

 メイドさん、五月先生の後ろに隠れます。


「フンフンフン」

 五月先生、にこやかに会話をしています。

「Thank you」

 外国人は最後にそう言って、キョロキョロと周りを伺いながら歩いて行きました。


「五月様すごい」

「ははは、英語はボディランゲージだ」

 五月先生、自慢気です。


 メイドさんがつぶやきます。

「……通じてないと思われます」

「ははは……」




【カエルの合唱】


 グェー、グェー……。

 家より広い五月家のお庭から、鳴き声が聞こえてきます。

 グェー、グェー……。

「五月様、カエルが鳴いております」

「ふむ、春だからな」


 グェー、グェー……。

 カー……。

「カラスも鳴いております」

「ふむ、カエルとカラスの合唱だな」

 おふたり、なんとも春らしい会話です。


 グェー、グェー……。

 カー……。

「グェーカー、イェイ」

「お前も春だな」


 グェー、グェー……。

 カー……。

「グェーカー、イェイ」

 季節は春です……。

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