35 昭和ッ子疑惑②・あじさい③・自然の恵み

【昭和ッ子疑惑②】


 五月家は畳のお部屋がほとんどです。

 フローリングは居間と台所です。

 でも、どちらもじゅうたんを敷いてしまっています。

 

「五月様、畳のにおいって落ち着きますですね」

 五月先生の書斎に寝そべって、メイドさんが言いました。


「ああ、落ち着くな」

「フローリングもおしゃれで好きですが、畳の部屋は居心地が良いのです」

「……お前、やっぱり昭和ッ子だろ?」

「い〜え〜」


「めっちゃあやしいんだけど……」

「い〜え〜」

 メイドさん、もう白状しちゃいましょ。

「い〜え〜」




【あじさい③】


 先日植えたあじさいの他にも、五月家のお庭には古株のあじさいがあります。

 色は毎年、水色と薄い紫色が咲きます。

 今はまだ、ほとんどが黄緑色です。


「五月様、あじさいさん咲きました」

「ほー、今年はでっかいな」

 新参あじさいの三倍くらいありますね。


「色の移り変わりが楽しみだ」

「あい」


「あじさいって……お前に似てるな」

「五月様、みなまで言うな……」

 コロコロ変わるってところでしょ。




【自然の恵み】


 梅雨本番で、雨の日が続いています。

 お庭のあじさいは嬉しそうです。

 葉の緑は鮮やかで、花も日に日に色付いていってます。


「五月様は雨がお好きですか?」

「好きも嫌いも、天候の一つだからなぁ」

「はぁ」

「天候を人生になぞらえたり、涙雨なんて言うけど、陽射しも雨も自然の恵みだからなぁ」

「はぁ」


 こればっかりは、人がコントロールできません。

「無いよりあった方がいいよなぁ」

「えぇ」


「お金は」

「五月様、何の話?」

 五月先生の心の声、切実なつぶやきです。

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