32 他力本願・犬か猫か・昭和っぽい①

【他力本願】


「ふぁーっ」

 書斎の五月先生、大きなあくびです。

 メイドさん、こっそり覗いています。

「五月様、またネタに行き詰まったのでしょうか……」


「ふぁ、ふぃーっ」

 先生、それもあくびですか?

「今回はだいぶ重症のようでございます」

 さっきのは、重症の時のあくびなのですね。


「ふぁーっ、誰かおもしろネタ持ってきてくれないかなー!」

 これは相当な重症のようです。


「五月様、他力本願はダメでございます!」

 五月先生、ファイト!




【犬か猫か】


 五月先生とメイドさん、ペット特集のテレビ番組を観ています。

 寝言を言う猫、芸達者な犬、うさぎと仲良しの鳥、キスをするとかげ。

 面白可愛いペットちゃんたちがたくさん出ています。


「犬か猫かでいったら、五月様は猫でございますね」

「かもしれないな」

 五月先生は、りんとした黒猫のイメージです。


「お前は犬だな。しっぽ振って甘えてくる」

「違いますですよ。わたくしは可愛らしいうさぎさんです」

「まだ言うか!」

「ほんとのことです」


「月に行きたいか?」

「犬でいいです……」

 メイドさん、ワンちゃんだって可愛いですよ。




【昭和っぽい①】


 最近、雨が続いています。

「五月様、たいへんです! 雨漏あまもりです!」

 ほんとだ、たいへんです。

 居間の天井に貼ったクロスが、ふやけてしまっています。


「どうしましょう、どうしましょう〜〜〜」

「そんなにうろたえるな。古い家なんだからしかたがない」

「と、とりあえず洗面器と鍋を用意いたしました」


「大工さん、すぐ来てくれるかな?」

 ピチャン、ピチャン……。

 ピチャン……。

 天井を見上げる五月先生、不安顔です。


「非常に昭和っぽい……」

 昭和に建てた家ですからねぇ。

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