11 溶ける①・溶ける②・一人で買い物

【溶ける①】


 メイドさん、お買い物です。

「おや、メイド様」

 八百屋のおかみさんに声をかけられました。


「まぁ八百屋さん、わたくしに様などお付けにならなくてようございます」

「だって、有名な作家大先生んとこのメイド様さね」

 さねって、おかみさんいつの時代の人?


「五月先生のメイド様ですって?」

 他のお客さんがメイドさんに気がつきました。

「ワーキャー」

「ワーキャー」


 メイドさん、もみくちゃです。

 若干潰されています。

「嬉しすぎて溶けてしまいますぅ〜」

 トロトロ〜〜〜




【溶ける②】


 トロトロ〜〜〜

 トロトロトロ〜〜〜

「五月様ぁ〜」

 メイドさん、お買い物から半溶けで帰ってきました。


「八百屋さんで大変な目にあいましたです」

「あ? 部屋汚すなよ」

 フキフキ、フキフキ……。


 メイドさん、床を拭きながら、ふと気がつきました。

「そういえば、有名な作家大先生ってどういうこと……?」

 ええ、ええ、そこですよね。


「さてはゴガツン、やりやがったな」

 メイドさん、だから言葉遣いが……。

「大ぼら吹きめ」




【一人で買い物】


 五月先生とメイドさん、今日はふたりでお買い物です。

 スーパーの安売り日だったので、生活雑貨をたんまり買い込みました。

 おふたりとも、両手いっぱいに荷物です。


「さぁてと、買い物これで全部かな」

「あと、わたくし文房具屋さんに寄って帰ります」

「お、文房具屋か。何買うんだ? わたしも付き合うぞ」

 五月先生、優しいですね。


「五月様には関係ございませぬ。一人で行ってきます」

 え、メイドさん、それはつれない。


「ほら、また避けられてる……さびしいよー」

 ですよねぇ。

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