星霜の彼方へ

新藤康誠

プロローグ

 雨が止みましたね、と微笑む君。傘を閉じると、君は嬉しそうに駆け出し、僕に手を差し伸べた。白く細い、美しい指先。僕は手を伸ばし、君の手を掴もうとする──


 「マモナク、セントウチュウイキニ、トウチャクシマス。キカンノ、ゴブウンヲ、オイノリシテイマス」

AIの歪な声に、僕は目を覚ました。眼前には美しい彼女の白い手ではなく、不気味な黒い艦隊が差し伸べられている。


 そうだ──僕は、戦場にいたんだ。そう、思い出すと静かに、連なる艦隊を見つめた──

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