我道瑞大

考えてみれば、奈良時代、というのは人の名前や文化ひとつとっても何も知らない異世界なんだな、と思いました。 どこまでが実際の文化風俗で、どこまでが作者の創作なのかわからないほど、設定…続きを読む

謎と嘘が散りばめられた中で、誰一人として油断できない、そんな状況が誘引力となる物語ですが、気がつくとキャラクターたちに感情移入し、応援し、先を読みたくなってしまいました。 SNSと…続きを読む

もう一作読ませていただいた「チュニジアの夜」の衝撃は忘れ得ないものでしたが、こちらの作品も、一つ一つの描写が淡々としていながらも丁寧で情景が目に浮かぶようでもあり、解体業を営むユゲ…続きを読む

　まず驚くのは、物語の裏側に深い知識の裏付けがあり、その上で狂気や怪異を非常に自然で説得力のある方法で描写していることです。 　西洋の化物が江戸の街に現れたならば、何が起きるのか。…続きを読む

ヤングケアラーの少年と天邪鬼を主人公に据え、児童文学という分野で現代日本の病理を正面から扱った作品でした。 描写はコミカルであるため子どもたちでも読むことができる内容ですが、大人の…続きを読む

中学校の数学といじめ、という現実世界の問題を、異世界に転移することで相対的に見ることができるようになり、成長によって解決に至るというストーリーは、逃避的に扱われやすい異世界モノに別…続きを読む

凄まじい物語でした。 当初は、抑制的で影のある文章ながら、男女が出会いを通じて何かを得ていくような、そうした雰囲気があり、援助交際デリバリーヘルスという内容ではあるものの、次第に拡…続きを読む

死神から長い寿命ろうそくを譲り受けるやり取りに「なるほど」と思わせられたところに、ラストで驚かされました。 死神の寿命ろうそく、という設定をうまく活かしながら、新しい視点が斬新な…続きを読む

家出をするコウキに唐突に便乗してくる見知らぬ少女マイカ。 コウキの家出の原因となったミズホ。 当初は背景として進行する女子高生が刺された事件。 衝撃的なシーンの連続に目が離せなく…続きを読む

どこの世界でも、自分より位が上の相手にでも臆さずに自分を貫き、弱いものを助ける人物というのは好感がもてます。 主人公の櫻花がまさにそういう人物であるのは、タイトルにもあるように、呪…続きを読む

自らの命を守るために殺し屋になったナイツ。 自分の命可愛さに人を殺すことを選択した彼が、自分の命を賭けても守りたい存在を見出す物語です。 ナイツの様々な葛藤や、自分を殺すように…続きを読む

前世の記憶から、転生した先でも強い意志を持って死のうとする主人公の、首尾一貫した一連の自殺行動が真に迫っており、 あらすじにある「処刑台一択」という文言とともに今後の展開を期待させ…続きを読む

丁寧に伏線を張り、組み立てられた物語でした。 蓮野内くんとの争いや不良たちから東海林さんを守る日常の描写が生き生きとしており、ラストの喪失感の大きさは、そのまま東海林さんと過ごした…続きを読む

甘夏の木に起こった異変を主題に、フグの毒についての話題や挙動不審の娘婿の様子などが丁寧に書き込まれており、 先の展開を予測して緊張が高まっていきます。 そうした先にほっと一息をつ…続きを読む

乙女ゲームの悪役令嬢に転生した主人公がどうやって破滅の運命を避けるのか、という先が気になる設定に加え、 主人公の明るく前向きで暴走しがちな性格、様々な困難を魔術(物理)で解決、転…続きを読む

冒頭の神経伝達のうんちくからの格闘シーンから、そうくるか！ と思わず唸る展開。ぜひ読んで確かめてください。

小説の技術として、人間ではないものに成りきる「異化」の視点がありますが、 まさしく、牛の目から見た食レポでした。 瑞々しい牧草にミネラルブロック。 そして反芻。 牛あるあるを詰…続きを読む

「元カノの娘」という設定から、愛憎渦巻くような関係性を想像しますが、主人公もヒロインも、悲惨な過去を背負いながらもまっすぐな心根の持ち主で、関係性に好感が持てました。 お互いの境遇…続きを読む

ここには、科学の及ばぬ超自然の真実があります。
未知へと踏み出す勇気のある方は、ぜひこの研究報告を読んでください。
記載通りの内容を読めるかどうかは保証しませんが。

空白を巡る物語の構築が非常にうまく、主人公の孤独感や焦燥感に共感しながらストーリーに引きこまれました。 2転3転する物語展開に、驚愕であり奥深いラスト。 ネタバレを避けながらレビ…続きを読む

お金は、ある人が誰かに労働力を提供した証明として与えられ、それを使うことで別の人の同等の労働力を買うことができるものですが、 人間が労働をしなくなり、すべてが自動化されたらお金は存…続きを読む

宇宙船に乗って銀河世界を巡る世界観と、魔導師などのファンタジーの要素が組み合わされています。 地球を古代地球と呼び、エイプリルフールが古代の風習として受け継がれている世界観の中で今…続きを読む

駐輪場に蛾がいたことによって心に湧き上がった葛藤やトラウマ、虫という存在の儚さや強かさなどを、丁寧な描写で描ききっていたと思います。

タイムリープ、独心術、変身能力、現実を書き換える能力、治癒能力 人々がそうした力を手に入れた結果として、何が起こるのか。 幸せになれる人間とそうではない人間。 物語のバリエーション…続きを読む

何が恐ろしいかと言えば、全体の雰囲気は全くの日常である点です。 全く普通の小学生の日常といった雰囲気の描写の中に、違和感のある出来事が起こり、気づけば怪異に飲み込まれている。 特に…続きを読む

異世界転生者なのに、がっつり現世に配信するという設定が面白く、楽しめました。 配信の最後に主人公の言う「では、皆さんに素敵な幻想がありますように」 という挨拶は、異世界っぽさが際…続きを読む

2時間という時間制限と、似ているけどどこか違う町並みの謎に引っ張られて、ラストまで楽しめました。

AIを蜂にたとえた描写が秀逸でした。 また、それぞれのAIに個性があり、異端的な性質のものまでいる、というのは、データや学習方法で違いがでるAIの性質を鋭く表現できていると思いまし…続きを読む

どの話も「文字に起こすと本音が出る」というアイデアを元に、本音と建前が入り交じる人間の本質を鋭く描写しています。 どのキャラクターも腹に一物ある強かななキャラクターで、そのしたた…続きを読む

背くらべをする二人の微笑ましい関係性から一転、二人の生きる世界の残酷さ、生み出された理由とのギャップに目が離せなくなりました。

人に危害を加えるか否か、自分が廃棄処分になるかどうかを越えて、主人のために動くツバキの姿が魅力的でした。

身体が金に変わって、というあらすじから幸福の王子のような自己犠牲の物語を想像しましたが、いい意味で裏切られました。 大金を前にして、目の前の出費を厭わない主人公の心理はよくわかり…続きを読む

人間の心に深く刻まれた教育は、人間の最も根源的な欲求を上回るのか？ タイトルと冒頭はコメディタッチでもあったように思いますが、読みやすい文章で書かれていながら扱う題材は深く、 主人…続きを読む

タイトルが全てを表している通り、地味な聖女が実は……、というのを、これでもか、と詰め込んだ痛快な作品でした。 主人公の聖女視点と、彼女を追い出したキアーラ視点が交互に掲載される構成…続きを読む

メリーさんというよく知られた怪談を、180度違う作品に仕上げた発想力に度肝を抜かれました。 細かいホスト描写も面白く、メリーさんが思わず引き込まれてしまうのもわかります。 終始楽し…続きを読む

遺伝的なクローンというよりは、 同じ顔、似た性格、痛覚なし、僅かに違う能力、血肉の代わりにジェルといった特徴を備えたアンドロイドに近い存在の《クローン》が、終始憎悪と嫌悪の対象とし…続きを読む

ネット上ではお互い惹かれあっている友達同士、リアルではただ隣の席同士。 お互いに正体を隠しながら、相手の正体や気持ちを探るやりとりが楽しく、果たしてここからどうやって関係性が発展し…続きを読む

メインヒロインは、不幸な生い立ちを乗り越えて、主人公が生きる支えとなっている、お嬢様、幼馴染、周囲から孤立、死ぬはずの運命、許嫁、感情がうまく表せない、と守ってあげたくなる全属性完…続きを読む

死者が蘇生するという現象は、文化によってはキリスト復活や不老不死につながる最高にボジティブな要素ですが、黄泉返りという現象を忌むべき現象と捉え、周囲からの隔絶や支えてくれた乳母との…続きを読む

2転3転する衝撃的な展開と、振れ幅の大きなセカイの変化が魅力的な物語でした。 頭の中で描いた光景が、何度も塗り替えられる感覚になります。 壊れてしまった人物、壊れる前の人物、強い意…続きを読む

　まず驚くのが、正確な科学的な考証に裏打ちされた異世界に関する考察であり、その異世界が「何」なのかという謎が物語をぐいぐいと引っ張っていく点です。 　６進法、形態学、万有引力、緯…続きを読む

ぬいぐるみ、という題材の独白調で、これほど怖い話が書けるとは……。
一つ一つの事象がぬいぐるみあるあるだけに、怖さが引き立っています。

壁があるかのように自分の声が届かず、翻弄され続ける夢の中のシーンが「夢」としてリアリティがありました。 一見すると荒唐無稽な出来事の連続が、優等生真島に振り回された主人公の深層心理…続きを読む

豚と「私」の会話劇 豚を見下す私と、私を見下す豚の関係性が面白く、哲学めいた「価値」に関する会話を興味深く読めました。 豚と会話する「私」は何なのでしょう。 夢という舞台設定を分か…続きを読む

　のっけからの若干高いテンションに、当初はコメディ混じりにオチのつく類の話かと思っていましたが、第2話のラストでそれがひっくり返り、第3話でさらにひっくり返りました。 　男が乗せて…続きを読む

早口言葉を言った瞬間に現れる言霊遊びの光景がまるでディズニーやジブリのアニメのようで、動きのある描写と仮初の命であるパパの存在、そして母の迷いと強さに引き込まれます。