我々人間の視点だとタイトルだけを見て、「出てくる料理はステーキかな……?」などと思ってしまいそうだが、本作は意外や意外、動物が食べられる話ではなく、動物たちが動物の視点からグルメリポートをしていく異色の食レポ小説!
野牛の末裔であるエナム・バンテンを筆頭に、アニマルアカデミーによって知性を与えられた動物たち――ライオンやトカゲ、ゴリラに鰻(!?)といった様々な生物が女将さんに振る舞われた料理を食べて、食レポを繰り広げていく。
この食レポが人間視点で見ても普通に美味しそうなのだが、本作はただ食べるだけではなく、牛のエナムは一度呑み込んだ料理をしっかり反芻して味わうし、ライオンのサバーは肉の塊を噛まずに丸呑みして喉越しを楽しむなど、その動物にしかない特性をフル活用しており、食レポと同時にそれぞれの動物の生態を学ぶことができるのが大きな特徴!
動物たちが美味しい料理に舌包みを打つという一見ほのぼのした内容なのだが、その一方で、活動目的がよくわからないアニマルアカデミーの設定や、正体不明女将さんなど、合間合間に不穏な要素を挿し込んできて、先の展開の予想がつかなくなっているのも作品の良いスパイスになっている。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)