見えない支配構造の中で生きるリアルな日常

もう一作読ませていただいた「チュニジアの夜」の衝撃は忘れ得ないものでしたが、こちらの作品も、一つ一つの描写が淡々としていながらも丁寧で情景が目に浮かぶようでもあり、解体業を営むユゲ先輩が作り上げた小さな町の支配構造の中で生きる日常が、解像度高く描ききられていたと思います。

街に生きる人間は、生きがいの見いだせない茫洋とした日々を生き、眼の前に金や女がチラつけば誰もが欲望に囚われて行動をし、まるで蜘蛛の巣にかかった獲物のように見せしめとなり、街の支配構造の維持に一役買う。
そうして維持される街の情景が、精緻な描写とともに描かれた怪作でした。