まず驚くのは、物語の裏側に深い知識の裏付けがあり、その上で狂気や怪異を非常に自然で説得力のある方法で描写していることです。
西洋の化物が江戸の街に現れたならば、何が起きるのか。
江戸の人々は未知の怪物たちをどう捉え、どのような動揺や恐慌を感じ、どう対処するのか。
その想像力の解像度が高く、物語に引き込まれます。
また、平賀源内や杉田玄白といった歴史の教科書に登場する名前だけはよく知った人物たちの関係性や内面の描写は、本当にそのようなやり取りがあったのではないかと思わせるものでした。
特に平賀源内に関しては、彼が主催した物産会や温度計の原理を理解したという実際の逸話をベースに、物語内での彼の狂気的な行動が非常に説得力を持って描かれており、それが作品のサスペンスを一層際立たせています。
混乱を極めた江戸の街が、一体どんな結末に収束していくのか、目が離せません。
~あらすじより~
文化14年(1817年)の江戸の町を恐怖に陥れた、犬神憑き、ヌエ、麒麟、死人歩き……。
事件に巻き込まれた、若い町医の戸田研水は、師である杉田玄白の助言を得て、事件解決へと協力することになるが……。
有名な歴史上の人物の名も出てくる、江戸を舞台にした作品。日本や中国の妖怪や海外の怪物まで。なぜそんなモノたちが江戸に現れ、事件を起こすのか。
その原因はなんなのか。
ただの町医である研水は、事件に巻き込まれたことをきっかけに、その解決のため奉行所の同心、影山に協力することになる。
文芸小説といっても良いほど、洗練された作品。妖怪の詳細は近況ノートを見ればより物語を楽しめ、絵図もあって想像しやすく、とても工夫されているなぁと感心します。
そんな江戸を舞台にした、人間模様やちょっとした小話も作品の魅力で、歴史小説とはまたひと味違う面白さもあります。まずは一話を読んでみてください。雰囲気が好きな方は、さらに次のページを。そして気付けば物語の面白さ、不気味さ、ひんやりとした怪談のような怖さを感じられるはず。
私はとても好きなジャンルのお話でした!
文芸よりの作品が好きな方に、ぜひともおススメしたい作品です。