歴史的事実の裏側に創造された狂気と怪異の物語

 まず驚くのは、物語の裏側に深い知識の裏付けがあり、その上で狂気や怪異を非常に自然で説得力のある方法で描写していることです。
 西洋の化物が江戸の街に現れたならば、何が起きるのか。
 江戸の人々は未知の怪物たちをどう捉え、どのような動揺や恐慌を感じ、どう対処するのか。
 その想像力の解像度が高く、物語に引き込まれます。
 また、平賀源内や杉田玄白といった歴史の教科書に登場する名前だけはよく知った人物たちの関係性や内面の描写は、本当にそのようなやり取りがあったのではないかと思わせるものでした。
 特に平賀源内に関しては、彼が主催した物産会や温度計の原理を理解したという実際の逸話をベースに、物語内での彼の狂気的な行動が非常に説得力を持って描かれており、それが作品のサスペンスを一層際立たせています。

 混乱を極めた江戸の街が、一体どんな結末に収束していくのか、目が離せません。

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