設定や構成がとにかく面白くって、他にはない読書体験が得られる作品です。
人が本音として思っていることが「ルビ」という形で出てきてしまう世界。
地の文という形で「建前としての言葉」が出てきて、ルビという形で「心の中の本音」が描かれるという現象。
そこのルビに出てくる言葉があまりにぶっちゃけていて、一つ一つに笑わされます。
シチュエーションも多岐に渡り、「会社の採用面接を受けに行った若い女性」や「結婚披露宴のカップル」、更には「アンドロイド」なんかも登場します。
「たしかに、若い女性の面接してる人って、こんなこと考えてそう」とか、「思わぬサスペンスが裏で展開している……!?」という感じとか、各エピソードごとに色々なタイプの「本音と建て前」を見せられ、「あるある」とか、多様な感動を与えてくれます。
文章や文体というものを使った実験小説的な味わいもある、とても個性的な作品です。笑えること間違いなしで、読めばきっと楽しい時間を送れることでしょう。
カクヨムのルビ表示はとても便利にできています。様々な作家さまがルビを使って鮮やかな文学表現を展開されているところ……満を持して登場したのがこの作品でした。
本音がルビに出る世界!
これだけ聞くといわゆるルビ芸に特化した作品と思われるかもしれませんが、いやはやどうして、ブラックユーモアに満ちたアイロニカルな短編集の傑作です。就職活動、結婚式、諜報活動。人間の人間性が問われる局面において、致命的なまでに露わになる本性。誠実でなければ生き残ることができない。そうした世界が現にあったとしたら? 人類は生き残ることができるのでしょうか。
ぜひ、この作品を楽しみながら考えてみてくださいね。あなただけの心のルビが、浮き上がってくるかもしれません。