友未 哲俊

だって、けんちゃんには絶対に取り戻さなければならないものがあったからです。

衝撃のラストに「これでもか」と、とどめを刺されました！
無気味で混乱するのに、後味が少しも悪くありません。

爽やかでさりげない文章のタッチと、名付けのセンスが絶妙です。

詩形的にも内容的にもバラエティー豊かな歌のほぼ全てに日本語の意訳を添えて下さっているので、中国語や漢詩の知識の全くない読者が読んでも充分に雰囲気を愉しむことのできる驚きの歌集です。…続きを読む

八歳のお譲さんの歌も含まれていました！猫も出て来る。

珍しい「五七七七五」形の都々逸ですが、「わしもお主も悪者じゃなと」とか「辛いもんだね」とか「いゃな」など、雰囲気満点です。

いかにもエッセイ的な手触りの、構えのない詠み口に惹かれます。 美しい草花や人の姿に思いを寄せる暖かい歌もあれば、世の動きへの疑問を率直に問う句もあり、津軽の風土感も満載でした。 所…続きを読む

ダンディズムを感じます。

読み終えた時、混乱した頭の中を金魚が泳いでいました。

一歩退ると、作品のユーモアがより見えて来るような気がします。

最後まで読み切ると、序章そのものが一種の騙しに見えて来るほどの筆力です。ぶっ飛んだ作品のファンに是非！

海辺の漁村に育った私の人生は、幼いころ世話をしてもらったさな、結婚相手のいを、最後に現れたとわ、そっくりの相貌を持つ三人と共に、人魚の鱗を軸にしてどこまでも廻っていく。　（作者によ…続きを読む

「いや、桃が強すぎだよ。めちゃくちゃ桃食いたくなったもん」　（本文より）

クラシック音楽のファンには特にお勧めです！

ナンセンスとイタズラでいっぱいです。

　山姥は鉄のハサミと、カピバラ一頭くらい入りそうな巨大な籠を私に手渡した。 「この籠一杯分、ゴーヤをもいでおくれ。小さいのは要らない。熟れたやつを選ぶんだよ。それから茎から実を切り…続きを読む

私たちが普段食べている苦瓜は、全く熟れていない。熟れていないから苦いのだ。 実った緑の苦瓜を収穫せぬまま育てていくと、それは徐々に熟れ、オレンジ色に染まっていく。 熟れた苦瓜の種は…続きを読む

草の上に横たわる青年は、まるで眠っているかのようだった。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（「天狗の棲む山」本文より）

コロナ騒ぎの中で催された鼻歌大会。
トラック後退アラームやカラスや竿竹移動販売車のあるある迷惑が、いきなり文明論や人類史につながって行く壮大さがケッサクです。

　私の家の主人、のさらに主人の岬ちゃんが今日も元気に餌をやりにきた。フクは元気に犬小屋から飛び出していく。小屋に負けじと、ぶくぶくと太った大きな体を俊敏に動かし、餌に飛びついた。　…続きを読む

「お待たせしました……。え、何してるんですか？」 「愛理！　助けてくれ！　襲われる！」 「何よ！　最初に川で私のことナンパしたのはそっちでしょう？」 「あれは違う！　助けたんだ！」…続きを読む

人の姿や営みを映しながらも、それを時の高みから鳥瞰して行くような、シベリウスの最後の交響曲や「タピオラ」にも似た眼差しの遠さの広がる、コンパクトにして壮大なファンタジーです。喜びも…続きを読む

とにかく文章と描写力が凄いです。
酒やサラリーマンや椿事に興味のある方にも、ない方にもお勧めです。

囲碁や歌詞の話題など、エッセイふうの味わいも楽しめます。

　彼が扉を開くと、詰め込まれた夏の日差しが一気に解き放たれ、強烈な光が目に刺さる。こちらを向いた彼の瞳が光を受けて金色に輝く。シャツの白さが眩しい。真正面にあるステンドグラスには幼…続きを読む

小学生みたいに社会の矛盾に体当たりでまっすぐ突っ込んで行くお話なんて、普通、恥ずかしくて誰も書いてくれません。そう、言いたいことははっきり言わなければ … ！

「ただ鴛鴦を羨みて、永遠の命は羨まず」
娯楽性と文学性の両立が見事です。
「西涼女侠伝」へのスピン・インをお薦めします。

「超初心者」と謙遜されていますが（ご本人は本当にそう思われているのかもしれません）、どの作品を取り上げても親しみやすい妙味と感動が息づいており、俳句を書かれている方々や文芸的な短詩…続きを読む

二つの絵の重なりを鮮やかに捉え切ったさわやかでメリハリのある文章が見事です。

　私はそんな場所に、この薄墨の闇が広がる水底に、ずっと居続けている。時たま訪れる激しい潮流のせいで、存在する場所は少しずつ変わったとしても。水底にいること、それ自体は変わらない。月…続きを読む

外気にさらされ冷めたココアは 飲み干したとしても べたつく甘さを口に残すだけ かつてのように 内側から暖めてくれることは もう　無いのだろう だからそろそろ手放そうか いつまで…続きを読む

それは、呪縛からの開放だったが、私の存在価値がなくなったことをも意味する。

　　　　　　　　　　　　　　　　　（風さま「ムーン・シャイン」本文より）

容姿はすばらしいのにブログがお粗末な俳優。現実を描くのが不得手な小説家。海外に行って散歩するのがやっとの吝嗇りんしょく家で小心者で神経症気味な会社員。 　その現実が能力として存在し…続きを読む

ただ美しい。
美しいだけでは何かいけないのでしょうか。

三国志時代の物語。歴史物としての面白さの他にも、大立ち回りあり、策謀あり、笑いあり、謎ありとエンタメ要素満載です。知らず知らずのうちに三人の主人公が心に棲み付いてしまうでしょう。

父親も母親も、揃いも揃って独善的で、視野の狭い、薄っぺらな恥知らずだった。そのうえ、頑迷で横暴、不寛容で世間知らず、見栄っ張りで自己愛ばかり強く、義務と権利の区別もつかない、身勝手…続きを読む

魔法や怪物は苦手だという方も、一目で偏見を吹き飛ばされてしまうでしょう。 きびきびと精緻で巧みな文体に息を吞みました！驚くべき緊迫感です。最初のエピソードだけでも、優に短編小説一作…続きを読む

願わくはモザイクなしの原文で読ませて頂きたい所ですが、ネット上では自主規制もやむを得ないのかと少し悔しくなります。怖くて美しい官能文学です！

「アイスキャンデー」　不揃いに割れたアイスのでかいのをあげたくなることそれが愛だよ 「せんせい」　「バナナはおやつじゃない」と言うあなたへの想いは恋に含まれますか 「ささくれ」　た…続きを読む

痺れた腕に寝顔と温もり/目覚まし止める/鳴る前に ぶっきらぼうな貴方の珈琲/お砂糖一粒/投げ入れて お隣さんがカレーを作る/我が家も向かいもつられます 私のために争わないで/…続きを読む

「剥き出しの公衆便所で用を足す」←季語が＜便所＞の五七五 「素手でもぐらを掴んだ感触に似ていた初体験」←どんな感触やねん！ 「まっすぐすぎるエビフライはいかに生きたか」←まっす…続きを読む

暗い部屋に　灯りひとつ 眠気を誘うはずの　暖かな光 でも私　まだ今日を終えたくない だからスマホなんか手に取って あがいてみる なんの意味もないのに 明日が来てしまったら や…続きを読む

南天の生りに生りたる街角のさきはひ願ふ年の暮れかな

あけてこそ良さを知りなむ玉くしげ黄金にそめし茅渟の海とは

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（本編タイトルより）

誰も夕陽を観ていない写真を撮る

誰も帰る家が在る無人の駅

花の名も解らず夜に向かう駅

　　　　　　　　　　　　　　（本篇より）

廊下の端に蹲る子豚みたいなおじさんは 全裸で汗を掻いて震えていて 子豚みたいなアヌスだからみんなが 可愛い可愛いと言って撫でてくれる と思ったのに全然違う 　　　　　　　　　　　　…続きを読む

死は、本を閉じるように突然やって来る。　（本編より）