Keep my dreaming

作者 武石勝義@『神獣夢望伝』発売中!

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★★★ Excellent!!!

人の姿や営みを映しながらも、それを時の高みから鳥瞰して行くような、シベリウスの最後の交響曲や「タピオラ」にも似た眼差しの遠さの広がる、コンパクトにして壮大なファンタジーです。喜びも悲しみも結局は同じだというような …

★★★ Excellent!!!

 神の定義とはなんでしょう?
 一般的には、宗教信仰の対象として、崇拝され、同時に畏怖されるものです。
 神が世界を作り出したのか?
 はたまた世界を構成している何かに、神が宿るのか?
 解釈は幾通りにでもあるのでしょう。
 さて本作は、微睡み続ける神の、夢の中に作られたという世界を舞台にした物語です。
 世界は夢の中に成立しているわけであるからして、もし神が目覚めることがあれば、たちまちのうちに世界は滅びてしまうのです。
 そんな神の元に、一人の女性が現れます。彼女はある意図を持って、神を目覚めさせようとするのですが――?
  
 世界で暮らしている我々人間は、いかにちっぽけな存在なのか。争い続ける人間たちの所作に、神が怒ったとき世界はどうなってしまうのか。
 淡々と語る神の視点と、激しく感情を昂ぶらせる女性との対比に、世界の無情さを垣間見た気がしました。
 最後まで明白な定義は示されないのですが、解釈が多いぶん、短い文字数の中で様々なメッセージ性を感じられる作品です。
 結末は、ぜひあなたの目で。

★★★ Excellent!!!

Twitterで『絶望しかない』話が読みたいと呟いたところ教えて頂いたのですが、読み終わったあとのザワザワ感が最高でした。

『夢』といいながら、『現実』なのか『夢』なのか、目覚めるのか目覚めないのか、物語の世界観そのものが不安定であり、不確定で揺れている感じがあるのにも関わらず、それがこの物語を成立させています。

けれど、中盤には『現実』がきちんとある。そして、最後の最後、読み終わっても謎が残り、なんともスッキリしない。

ねじれているのです。

それに加え、『夢』と傍観している第三者の視点と、見せつけられた『現実』の感覚と、その落差がねじれをより歪にしていて、いいのです。

読みたいときに出会えて感謝です。
この後味の悪さを体感したかったのです。

Good!

ご自身で「救いがない」と書かれていましたが、個人的にはとても好きな雰囲気の一編です。眠り続ける存在は、まさしく「神」といえる存在。理不尽も殺戮も全て知った上で、それでも世界を許容する様には神々しいものを感じます。現実世界の神というのも、もしかしたらこういう存在なのかもしれないと思いました。

神がいったいどういう原因で眠り続けることになったのか。もともとどんな人物だったのか。ここまで世界を大きくするために、どんな展開があったのか。語られていないアナザーストーリーが気になってしかたない、そんな不思議な魅力をもった良い短編だと思います。

興味深く読ませていただきました。これからも頑張ってください。

★★★ Excellent!!!

淡々と流れるような語りの”私”と地底湖を覗き込む女性のやりとりで世界を表現しています。”私”の語りが無情な世界の姿を表しているのに対して、女性の激情の訴えが対照的です。
救いのない不条理な物語ですが、人智を超えた意思とはこういうものだと見せつけられた気がします。短くも”物語”を読んだという充足感がありました。

★★★ Excellent!!!

 世界がどういう状況であるか、主人公がどういう存在であるか、感じるように知って行く構成。

 短編のため、何を書いても内容のネタバレのようになってしまうため、詳しくは書けませんが、この文字数の中に、色々な要素が詰め込まれていました。

 文字数は少ないはずなのに、読後は長編を読み切ったような、深い痕跡を心に残します。
 

★★★ Excellent!!!

『夢の中で、私は微睡み続けている。』で始まるこの作品。
微睡んで夢を見る、じゃないです。夢の中で微睡むんです。
これは夢の中に世界を作った神の話。
これこそファンタジーやで!
もう一回言います。
これがファンタジーや!
5000字に満たない作品ですが、確かに、ここに、世界があります。