神の定義とはなんでしょう?
一般的には、宗教信仰の対象として、崇拝され、同時に畏怖されるものです。
神が世界を作り出したのか?
はたまた世界を構成している何かに、神が宿るのか?
解釈は幾通りにでもあるのでしょう。
さて本作は、微睡み続ける神の、夢の中に作られたという世界を舞台にした物語です。
世界は夢の中に成立しているわけであるからして、もし神が目覚めることがあれば、たちまちのうちに世界は滅びてしまうのです。
そんな神の元に、一人の女性が現れます。彼女はある意図を持って、神を目覚めさせようとするのですが――?
世界で暮らしている我々人間は、いかにちっぽけな存在なのか。争い続ける人間たちの所作に、神が怒ったとき世界はどうなってしまうのか。
淡々と語る神の視点と、激しく感情を昂ぶらせる女性との対比に、世界の無情さを垣間見た気がしました。
最後まで明白な定義は示されないのですが、解釈が多いぶん、短い文字数の中で様々なメッセージ性を感じられる作品です。
結末は、ぜひあなたの目で。
Twitterで『絶望しかない』話が読みたいと呟いたところ教えて頂いたのですが、読み終わったあとのザワザワ感が最高でした。
『夢』といいながら、『現実』なのか『夢』なのか、目覚めるのか目覚めないのか、物語の世界観そのものが不安定であり、不確定で揺れている感じがあるのにも関わらず、それがこの物語を成立させています。
けれど、中盤には『現実』がきちんとある。そして、最後の最後、読み終わっても謎が残り、なんともスッキリしない。
ねじれているのです。
それに加え、『夢』と傍観している第三者の視点と、見せつけられた『現実』の感覚と、その落差がねじれをより歪にしていて、いいのです。
読みたいときに出会えて感謝です。
この後味の悪さを体感したかったのです。
ご自身で「救いがない」と書かれていましたが、個人的にはとても好きな雰囲気の一編です。眠り続ける存在は、まさしく「神」といえる存在。理不尽も殺戮も全て知った上で、それでも世界を許容する様には神々しいものを感じます。現実世界の神というのも、もしかしたらこういう存在なのかもしれないと思いました。
神がいったいどういう原因で眠り続けることになったのか。もともとどんな人物だったのか。ここまで世界を大きくするために、どんな展開があったのか。語られていないアナザーストーリーが気になってしかたない、そんな不思議な魅力をもった良い短編だと思います。
興味深く読ませていただきました。これからも頑張ってください。