神のきまぐれ? あるいは遊び? 考えされられる短編です。

 神の定義とはなんでしょう?
 一般的には、宗教信仰の対象として、崇拝され、同時に畏怖されるものです。
 神が世界を作り出したのか?
 はたまた世界を構成している何かに、神が宿るのか?
 解釈は幾通りにでもあるのでしょう。
 さて本作は、微睡み続ける神の、夢の中に作られたという世界を舞台にした物語です。
 世界は夢の中に成立しているわけであるからして、もし神が目覚めることがあれば、たちまちのうちに世界は滅びてしまうのです。
 そんな神の元に、一人の女性が現れます。彼女はある意図を持って、神を目覚めさせようとするのですが――?
  
 世界で暮らしている我々人間は、いかにちっぽけな存在なのか。争い続ける人間たちの所作に、神が怒ったとき世界はどうなってしまうのか。
 淡々と語る神の視点と、激しく感情を昂ぶらせる女性との対比に、世界の無情さを垣間見た気がしました。
 最後まで明白な定義は示されないのですが、解釈が多いぶん、短い文字数の中で様々なメッセージ性を感じられる作品です。
 結末は、ぜひあなたの目で。

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