痛みを知らなかった少年と、痛みしかなかった少女の物語

「無痛症」という病をご存じですか?
 いっさい痛みを感じないというこの病、一見便利そうですが、怪我や病気をしても気づかなかったりと様々不都合があるのです。
 この病を患っている少年虹は、ある日、末期ガン患者である少女、羽子と出会う。痛みに耐えながらも、やり遂げたいことがあるんだ、と彼女から聞かされた事で?

 何より上手いと感じたのは、作品全編を通して病の設定を活かしきっていることでしょうか。
 虹がいなければ、羽子の願いは叶わず。また、羽子の存在が、虹の生きる意味となるのです。ここは本編で確認して欲しいのですが、病の存在がむしろ二人を結び付けるきっかけとなったのですね。
 また、二人を暖かく見守るサブキャラ陣も個性的。その中には意外な人物も含まれていて、読み手に向けたちょっとしたサプライズもあるのです。

 10万文字という読みやすい分量で纏まっている本作。お勧めできる、青春恋愛作品です。

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