私はそんな場所に、この薄墨の闇が広がる水底に、ずっと居続けている。時たま訪れる激しい潮流のせいで、存在する場所は少しずつ変わったとしても。水底にいること、それ自体は変わらない。月日など忘れてしまうほど、以前からずっと、変わらないことだった。 (「沈んだ彼女について」本編より)