作者が作者自身であることの証しのような美しいアイデンティティー作品です

容姿はすばらしいのにブログがお粗末な俳優。現実を描くのが不得手な小説家。海外に行って散歩するのがやっとの吝嗇りんしょく家で小心者で神経症気味な会社員。
 その現実が能力として存在していることをどうして恥じなければならないのか。それを変えてしまっては、すべてが壊れてしまう。居る場所から居なくなることを意味しているのだから、生態系規模で壊れるはずだ。つまらない、ちっぽけだと思い込んでいるこの身の回りが産みだされるまでにもどれほどの努力を要したかわからないのに、違うものを求める気持ちもまた、魅力的で、避け難いのだろうか。

                 (崇期さま「夕日と吝嗇な冒険」本文より)

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