全2編の短編作品。感じた事は、終わりの先の光。止んだ後の雪を太陽が照らしているような、そんな光。筆者の別作品と世界観が繋がっているようであるが、この作品はこれだけで完結していると考えたい。全てが終わっていた場からの進み、そこに結末は不要であろう。実に小説らしく楽しめた作品だった。
それは、呪縛からの開放だったが、私の存在価値がなくなったことをも意味する。 (風さま「ムーン・シャイン」本文より)
時間の流れは膨大である。降り積もるように。折り重なるように。蓄積していく時間という歴史。物語の主人公にも歴史はある。時間の中を生きている。小説はそれを切り貼りする作業である。作中には主人公の歴史はほんの少ししか語られない。しかしそれを読んだ僕たちは彼がどんな時間を歩んできたか想像できる。それが面白い小説ってものだ。この小説は面白いです。主人公の語られない歴史が読み取れる小説です。彼がどんな時間を歩んできたか。これから歩いていくのか。そしてもっと読ませてくれと願うでしょう。