彼が扉を開くと、詰め込まれた夏の日差しが一気に解き放たれ、強烈な光が目に刺さる。こちらを向いた彼の瞳が光を受けて金色に輝く。シャツの白さが眩しい。真正面にあるステンドグラスには幼いイエスを抱く聖母マリアが表れ、陽光を取り込んで教会内を優しく照らしている。 (「見えない翼」本文より)
まず、このお話を読むと思います。美しいと。一人の青年の清い心が、教会とよくマッチしています。いや、少女のフィルターを通しているからこそ、そう感じるのかもしれません。心理描写も風景の描写も非常に細やかに描かれていて、正直高校生だとはビックリしました……いや、高校生だからこそかもしれません。是非一度読んでみてください。
とても素敵なお話でした。気付くと主人公の伊織に自分が投影されて、手が届かないと思うほど清廉な彼と一緒に教会に行っていました。物語の中で彼にドキドキして、彼に好かれようと言葉を選ぶ主人公に深く共感しました。皆さんも、ミサに行ってみませんか?この物語の中で透明な羽を持った天使が、素敵な時間と共に案内してくれますよ。