【カクヨム甲子園2023受賞者インタビュー】二度目の応募で念願の大賞獲得!こだわりを貫くことで書けた受賞作(ショートストーリー部門大賞/白玖黎さん)

先日、「カクヨム甲子園2024」の詳細が発表されました。
7月16日の開幕に先立ち、昨年の大賞受賞者へのインタビューを掲載いたします。
執筆のアドバイスや着想のきっかけなど、応募を考えている高校生の皆さんの参考になること間違いなし。ぜひご覧ください。


――カクヨム甲子園への2度目の挑戦で見事大賞を獲られましたが、1度目と2度目の応募作品で変えたこと、逆に貫いたことなどがあれば教えてください。

白玖黎:
一度目に応募した『敖霜枝』は中国の明代の神怪小説『封神演義』から着想を得た作品です。二人の少年の友情のお話で、中国神話の世界が舞台となっています。こちらは落選してしまったのですが、応募の際に感想をくださった大人の方がいて、その方から「男女の恋愛作品を書いてみないか」というアドバイスをいただき、次年度はその方向性で物語を作ることに決めました。恋愛ものは今までに書いたことがなかったので、大きな挑戦になったと思います。

しかし、私には「中華ファンタジーでカクヨム甲子園を獲る!」という目標があったので、中華風の作品を書くことは変えませんでした。自分の好きなものに対しては、決して妥協を許さなかったです。おそらくこういった態度が、「カクヨムWeb小説短編賞2022」での受賞も含め、数々の成功に繋がったのだと思います。

私は「カクヨム甲子園2022」や他のコンテストでも落選経験があるのでよく分かりますが、時間をかけて大切に書いた作品が選に漏れると、気分が落ち込みますよね。もしかすると、筆を断つことを考えるかもしれません。ですが、私はそんな人にこそ創作を手放してほしくはないなと思っています。 努力は必ず実を結びます。もしかすると種を蒔いてすぐに実がなるかもしれませんし、なかなか芽が出ないかもしれません。ですが、せっかく蒔いた種なのに、今年は実を結ばなかったからといって捨てるのはもったいありません。

「カクヨム甲子園2023」では受賞を逃した方も、ぜひまたチャレンジしてみてください。あなたの作品の魅力が届く方は、必ずいるはずですから。

―― カクヨム甲子園参加以前に、創作のご経験はどの程度おありだったのでしょうか。

白玖黎:
小さい頃から物事を深く考えるのが好きで、遠いところをボーッと見つめながら空想するのが好きでした。その延長で、物語を考え始めたのだと思います。本格的に小説の執筆を始めたのは、高校一年生のとき、「カクヨム甲子園2022」の開催に合わせて書き始めたときですね。それからはカクヨム甲子園に限らず、幅広く創作を楽しんでいます。

―― カクヨム甲子園で大賞をとられたこと以外に、応募から授賞式を通して、参加してよかったと思ったことを教えてください。

白玖黎:
一番大きかったのは、やはり同年代の作家さんと出会えたことでしょうか。自分の周りには小説を書く知り合いがいなかったので、他人と創作の話をしたのは授賞式が初めてですし、しかも同年代の作家さんとお話ができたのは貴重な体験でした。
他にも、読者の方のなかに、自分の作品がきっかけとなって中国文学という概念を知ったと言ってくださる方もいました。そういうコメントをいただくと、小説を書くのを続けていてよかったなと思います。

記念品の表彰盾が辞書の詰まっている本棚の手前に飾られています
記念品の表彰盾(制作:キンコーズ・ジャパン株式会社様)

――『返魂香』の作品の濃密さは素敵な言葉選びに支えられていると感じました。白玖黎さんはどういった作品から影響を受けたのでしょうか。

白玖黎:
漢詩が好きなので、自分の作品にもついつい古い詩で使うような表現を取り入れてしまいます。四千年の歴史が育んだ豊かな言葉たちは、日常の細やかな情景や感情をすくい取るような素敵なものが多いのです。特に影響を受けているなと思うのは、李白や陶淵明などの詩と屈原の『楚辞』です。 他にも『聊斎志異』や『紅楼夢』などの古典文学や、『魔道祖師』や『三体』などの現代作家が書いた作品まで、幅広いジャンルの中国文学に影響を受けていると思います。最近は中国のネット小説サイトで玄幻・仙侠小説(東洋ファンタジー要素が入った作品)を読んだりしているので、世界観に関してはそちらの影響も強いですね。

―― 『返魂香』 の着想のきっかけなどがあれば教えてください。

白玖黎:
前述したように、男女の恋愛ものを書こうというのはぼんやりと決まっていたのですが、具体的なストーリーラインができ上がるまでは時間がかかりました。

返魂香を題材に物語を書こうと思ったのは、中国のとあるまとめサイトを眺めていたときに、返魂香に関する伝承を偶然見かけて「これなら書けそうだな」と思ったからです。このサイトは、中国を中心に古今東西のあらゆる神話や伝承に登場する神仙・妖怪をまとめたもので、中華風の神怪小説のネタ集めのためによく眺めているのです。

――受賞作でも受賞作以外でも、応募された作品への思い入れを語ってください。
『返魂香』は自分の中でも傑作だと思うくらいよく書けた作品なので、今後これを超えるような作品を書ける気がしません(笑)。それでも小説を書き続ける限り、超えられるような作品をたくさん書けるようになりたいですね。

他にも『忘川河の守り人』という作品をロングストーリー部門のために書いていたのですが、出来に満足できず、直前で応募を断念しました。ロングストーリーなのでそれなりに付き合いも長く、登場人物たちにも愛着がある作品です。

――作品を完成させるための執筆作業はどんなペースで行いましたか?

構想自体は数ヶ月前から練っていて、募集が始まる前の数時間で一気に書き上げたのを覚えています。

――最後に、カクヨム甲子園2024に挑戦する高校生に一言お願いいたします!

白玖黎:
今年の応募者の方々には、ぜひともご自身の「好き」を曝け出していただきたいです。最初から高校生らしく、だとか、もっと上手に、だとか、そんなものは気にしなくて大丈夫です。書けば書くほど、技術的なものは自然と身についてきます。まずは一作完結させましょう。

それに、カクヨム甲子園の間口はとても広いので、本当に何を書いても良いのです。去年の大賞は、中華ホラーファンタジーという青春や爽やかに掠りもしてない悲恋小説だったのですから、何も恐れることはありません。

もし一人で創作が行き詰まってしまったり、自分の作品に自信が持てないのなら、他人に助言を求めてみるのもいいかもしれません。読み手の方々はなかなか鋭く、的確なアドバイスをくださいます。

「カクヨム甲子園2024」の参加者の皆様が、良き創作ライフを送れることを祈っています。


▶︎「カクヨム甲子園2023」ロングストーリー部門大賞、楠 夏目さんのインタビューはこちら

kakuyomu.jp

「カクヨム甲子園2024」の応募受付は、 7月16日12:00から開始します。 皆さまのご応募、お待ちしております!

kakuyomu.jp