【カクヨム甲子園2023受賞者インタビュー】「二万字」で面白くするための試行錯誤が導いた、新たな創作の境地(ロングストーリー部門大賞/楠 夏目さん)

先日、「カクヨム甲子園2024」の詳細が発表されました。
7月16日の開幕に先立ち、昨年の大賞受賞者へのインタビューを掲載いたします。
執筆のアドバイスや着想のきっかけなど、応募を考えている高校生の皆さんの参考になること間違いなし。ぜひご覧ください。


――カクヨム甲子園に挑戦してみようと思ったきっかけを教えてください。

楠 夏目:
二日に一作くらいのペースで小説を書いて、完成次第投稿サイトにのせる、という生活を送っていた時に「どうせならコンテストにも参加してみたいな」と思い『小説 コンテスト』で検索したのがきっかけでした。

そこでカクヨムの存在を知り、同時にカクヨム甲子園の開催も知りました。今まで自分と近い年齢の物書きさんを見たことがなかったので、嬉しくなって挑戦意欲が湧きました。

―― カクヨム甲子園参加以前に、創作のご経験はどの程度おありだったのでしょうか。

楠 夏目:
小説を書き始めたのは、中学三年生の冬頃でした。家で、使われなくなった古いパソコンを発見した時に「何か書いてみようかな」と唐突に思い始めたのがきっかけでした。初めは基本もプロットも分からない状態で気が済むまで書いていましたが、続けるうちに文のリズムが分かるようになりました。

―― カクヨム甲子園で大賞をとられたこと以外に、応募から授賞式を通して、参加してよかったと思ったことを教えてください。

楠 夏目:
カクヨム甲子園への参加作品を執筆していた頃は、他の長編小説にも取り組んでいたので、二万字という文字数の中でどれだけ面白さを引き出せられるかを意識して書きました。投稿サイト等を利用して、シリーズ物から短編物まで幅広く執筆していたのですが『一夏の驚愕』は中でも特に綺麗にかけた作品でした。この作品と向き合った経験は、私の小説に対する考え方をより良いものにしてくれたと思います。

また、カクヨム甲子園の授賞式に参加した際は、素晴らしい高校生作家の皆さんと普段は出来ないような小説や文章の話も出来たので、参加出来てよかったなと思いました。

――『一夏の驚愕』には主人公の憧れの作家が登場しますが、楠夏目さん自身にも、憧れの作家は居ますか?

私が憧れている作家さんは、坂木司さんと中島敦さんです。
坂木司さんの引きこもり探偵シリーズ『青空の卵』 (創元推理文庫)は、私が初めて読んだ一人称の小説でした。主人公の内心がとても丁寧に書かれていて『動物園の鳥』(創元推理文庫)のラストは読んでいて澄んだ気持ちになりました。私に小説を書く意欲を与えてくれた憧れの作家さんです。

中島敦さんは、国語の授業で習った『山月記』から興味を持つようになりました。硬派な文体で一見すると難しいように見えますが、一文が短く且つテンポの良い文章なので最後まで楽しく読めました。『中島敦全集1』(ちくま文庫)にある『虎狩』を読んだ時の驚きは今でも忘れられません。全ての描写が参考になる、憧れの作家さんです。

記念品の表彰盾が文庫本の隣に飾られています

記念品の表彰盾(制作:キンコーズ・ジャパン株式会社様)

――『一夏の驚愕』の着想のきっかけなどがあれば教えてください。

普通に生活していると、ふとネタが思いつく事があるのですが『一夏の驚愕』もそうして出来た作品でした。学校に登校している最中に思いついたプロットのない作品でしたが、自分の中にある「こうしたい!」に従って書き進めていくうちに、物語の進むべき方向が明確になっていったのを覚えています。

――受賞作でも受賞作以外でも、応募された作品への思い入れを語ってください。

普段は作品を書き終える度に達成感を感じていたのですが『一夏の驚愕』を書き終えた時は、達成感よりも惜しい気持ちの方が強く湧きました。この作品は、主人公が驚愕する場面を最後に物語が終わりますが、今後の展開に希望が持てるよう書いたので、その先の物語も考えてみたくなりました。

ですが小説には、切らなければいけない絶妙なラインがあると思うのです。この作品を通して、小説との向き合い方が何となく分かった気がしました。自分を更に成長させてくれた思い入れのある一作です。

――作品を完成させるための執筆作業はどんなペースで行いましたか?

思いついたネタをメモするよう心掛け、隙間時間や意欲がある時に書き連ねました。話の展開に行き詰まったら、文章を声に出して読んでみたりもします。それでもダメな時は、家族の前で小説を読むこともあります(聞き流されてしまいますが)。小説を人に読み聞かせてみると、より読者の目線を意識して書けるのでおすすめです。

――最後に、カクヨム甲子園2024に挑戦する高校生に一言お願いいたします

自分の中にある「こうしたい!」を追求して、楽しく小説を書くことが大切だと思います。展開に迷ったら、気分転換に小説を読んでみたり、散歩してみたりするのもいいかもしれません。ネタは案外身近なところに隠れてたりするので、探す動作をぜひ意識してみて下さい。

皆様の創作活動がより良いものになる事を願っています。


▶︎「カクヨム甲子園2023」ショートストーリー部門大賞、白玖黎さんのインタビューはこちら

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「カクヨム甲子園2024」の応募受付は、 7月16日12:00から開始します。 皆さまのご応募、お待ちしております!

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