【参加を迷っている高校生必見】「カクヨム甲子園」過去の受賞者の今をインタビュー!



「カクヨム甲子園2022」の受賞者がサークルとして「文学フリマ」(文学作品展示即売会)に参加しているという情報を得て、活動内容や成立の経緯など、「カクヨム甲子園」という場を発端とした創作を通した繋がりについてインタビューしました。

――「あの夏の平行線」のふだんの活動内容について教えてください。

 カクヨム甲子園2022の受賞者である青葉雨虹みかん葉羽藤石かけす三嶋悠希緑山陽咲の6名が参加している文芸サークルで、主に文学フリマのために同人誌を制作しています。ふだんはLINEやdiscordで会話しつつ、最近では、リレー小説を書いて、X(旧twitter)で公開する企画も行っていました。


――同人誌の刊行作業はどのように進めているのでしょうか。

 これまでに二度制作しているのですが、メンバーのうち1人がテーマを決めて、それに合わせた小説をそれぞれが執筆し、アンソロジー形式で刊行するスタイルでやっています。一冊目は「深夜二時の遊園地前」、二冊目は「少年少女は終末に」というテーマで出しました。

「あの夏の平行線」で刊行した同人誌

 刊行のための装丁や段組みの校正は、文芸部出身で入稿作業の経験があるメンバーが主に取り回していますが、修正点は各自気づいたら共有するような感じで、明確に役割分担があるというより、それぞれが自分にできることを自発的にやっています。

 ちなみに、LINEに原稿をアップすると、誰かが感想をくれたり、評価してくれるので励みになります。 

――「カクヨム甲子園2022」当時はオンライン授賞式だったと思いますが、そこからどのような経緯で受賞者が集まって同人誌を制作することになったのでしょうか。

 実は、あの夏の平行線は「カクヨム甲子園2022」の授賞式以前に発足していたんです。

 12月の結果発表の後に、雨虹と三嶋がカクヨム甲子園の先輩方が集まって結成されたサークルである「海中時計」様に影響され、同人誌を作ってみたい、ということで当時親交を深めていた葉羽を誘い、三人であの夏の平行線を結成しました。さらに緑山、青葉、藤石が参加し、六人で文学フリマへの出店を目指そう! という流れだったんです。

 授賞式がオンラインだったからこそ、多くの受賞者が対面で会ってみたいという思いを持ち、結果的にオフ会を開催するきっかけになったと思います。

――皆さんにとっての「カクヨム甲子園」はどんな場所でしたか。

青葉:小説を書き始め、書き続けるきっかけとなった場所です。

雨虹:活動を広げるきっかけになった場所。カクヨム甲子園をきっかけに創作仲間に出会えたし、小説投稿サイトという存在も知ることができました。今がすごく楽しいです。

葉羽:憧れの場所でした。中学生の頃から小説は書いていて、何か参加できるコンテストはないか調べていくうちにカクヨム甲子園を見つけ興味を持ったのが始まりです。実際とてもレベルが高く、私自身、受賞した際は私でいいのかという不安もありました。しかし、憧れのコンテストで賞をいただく事で自信が持てるようになりました。

藤石:私にとってのカクヨム甲子園は、創作者としての自分を大きく変えてくれた存在です。自分の作品が評価されて、自分の創作に自信を持てるようになったことも一つですが、それ以上に、同年代の創作仲間と出会えたことが大きいです。カクヨム甲子園に応募しなければ、あの夏の平行線のメンバーに出会うこともなく、イベントに出たり、学校の部活以外で、創作について仲間と話し合う時間をもたりすることもほとんどなかったと思います。

三嶋:自分が小説を書き続けるきっかけとなった場所です。私は、カクヨム甲子園で受賞しなかったら筆を折ろうと考えていました。しかし、今ではあの夏の平行線の創作仲間とアンソロジーを作っています。当時の私からすれば信じられないことです。そして今後も、ずっと、私は生涯をかけて小説に関わっていくことになるでしょう。創作の面白さに気づかせてもらえて本当に感謝しています。

緑山:正直、カクヨム甲子園で受賞するまでそんなに小説を書くことに熱量を向けていなくて、作家は憧れに過ぎず、それは目標ではありませんでした。でもカクヨム甲子園で賞を獲って、僕の話に面白かったって言って貰えて、あの夏メンバーと出会って、そうやって物書きとして活動していく中で自分の世界が広がり、作家っていうのをちゃんと目指そうって思えるようになりました。僕が将来ノーベル文学賞取るような超神大作家になったとしても、「緑山陽咲」としての始まりであるカクヨム甲子園の事は語り続けますよ。

――執筆作業は一人で完結してしまう部分もあり、「孤独だ」と言われることもありますが、サークルがあることで、執筆の助けになっている部分もあるのでしょうか?

青葉:小説は一人で書くものだと思っているので、執筆の助けになっているかは微妙ですが、小説を書いている同世代の人たちと話すのは純粋に楽しいです。

雨虹:助けになっている部分はあると思います。たしかに普段の執筆作業は一人で完結します。しかし、同人誌のための作品作りはメンバーで協力して行うので責任感も生まれ、「書こう!」という気持ちになれます。

葉羽:少しあります。確かに孤独ではありますが、実際繋がっている仲間がいるため一人ではないと思えるのです。ただのネット上の人ではなく、同じサークルで活動する仲間がいる、それだけで何となく安心できます。

藤石:なっていると思います。サークルメンバーの作品を読むことは刺激になるし、自分の作品を読んで感想を送ってくれる仲間もいるので、楽しく執筆できています。加えて、サークルで締め切りがあることで、ダラダラせずに執筆できるという実利的な魅力もあります。

三嶋:確実に助けられていると思います。文フリ(文学フリマ)のために書き下ろす際は、自分の小説を本として形に残すことになるので、一番気合いが入ります。そして、メンバーやファンの方々からいただく感想が励みになっています。

緑山:急かしたり楽しみにしてくれたりする人間がいる事は滅茶苦茶有難いなって思ってます。放っておかれたら一生書かないので。

――皆さんはサークルとしての活動のほかで、個人としての執筆活動も行っていますか?

 カクヨムへの投稿のほか、新人賞など、小説コンテストに応募しているメンバーも居れば、大学のサークルでの執筆活動に励んでいるもの、依頼を受けて小説を記事として掲載してもらっているものもおり、それぞれですね。

 個人個人の活動についてお互いで強く関わり合うということはあまりせず、文学フリマでの刊行作業も、個人の作業を集団として一つの形に昇華させていく感じです。ただ、誰かがコンテストなどで良い結果を出したら、みんなでLINEでお祝いし合っています。

――とても良い距離感の関係性ですね。


――メンバーそれぞれの、執筆活動において成し遂げたいことを教えてください。

青葉:現在書籍刊行のための改稿作業を行なっているので、それを無事終わらせることが今の目標です。

雨虹:受賞すること。そしていつか書籍化もできたらいいなと思います。

葉羽:自分の想像をそのまま形にできる文章力、表現力を養うことです。元々自分の頭の中にある世界を取り出したくて小説を書き始めたため、ストーリーの構成や描写などを学び、取り入れ、思うように小説という形にするのが私の目標です。自分が読んで楽しい話を書きたいので。

藤石:誰かの心を救うような小説を書きたいと考えています。中学生の頃、人間関係でひどく悩んでいた時期に読んだある本で、登場するキャラクターの心情が自分と重なって見え、自分の悩みを口に出してはいけないと思っていた私は、衝撃を受けるとともに、この本に出会えたことにひどく感謝しました。それから私は、キャラクターの心情に焦点を当てた小説を書くようになったと思います。私の描く物語が、一人でもいいので、誰かの心の支えになったら良いなと考えています。

三嶋:本を出版し、本屋さんで自分の本が売られている光景が見たいです。また、その本であっても、文フリで販売するアンソロジーであっても、私の書いた小説を読んで、「小説っていいな」と思ってくれる方を、一人でも増やしたいです。

緑山:世界を獲る。手始めに直木賞か芥川賞取ります。

――カクヨム甲子園に興味を持っているけど、なかなか小説を書き出せないでいる人にアドバイスがあれば教えてください。

青葉:時間さえかければ絶対書ききれるので、まずは一文書いてみてほしいです。

雨虹:書き出せない苦しさは分かります。そんなときはどこかに出かけてみるのがおすすめです。何か新しい発見があると思います。

葉羽:書いてみれば意外と何とかなるので、まず一文でもいいから書いてみること。

藤石:自分の書きたいシーンや物語の冒頭だけを文章にすることも、立派な執筆活動です。恥ずかしかったり、思うようにいかなかったりするかもしれませんが、書きたいものがあるならば、一行でもいいので文章を書いてみることをおすすめします。はじめのうちは完成させる必要も、誰かに見せなければならないというルールもないので、気軽に初めてみてほしいです。

三嶋:書いてみたいジャンルの小説を、カクヨムで読んでみるといいと思います。同世代の人がカクヨム甲子園のために書いた作品を読んでみるのも、いいかもしれません。刺激がもらえたり、発見があったり、そこには何か創作に繋がる新しい遭遇がきっとあるはずです。

緑山:寝てると良いと思います。締切が近くなればどんどん焦り出して勝手に筆が動くので。

――最後に、「カクヨム甲子園2024」に参加するかどうか迷っている高校生の方にメッセージをお願いします!

青葉:後悔しないほうを選んでください。どちらも間違いではないと思います。

雨虹:迷っているということは、少なからず参加したい気持ちがあるということ。カクヨム甲子園は高校生限定のコンテストです。今しかありません。私はぜひ参加してほしいと思います。

葉羽:絶対受賞しよう、という気持ちでなくてもいいです。自分で小説を書いてそれを応募してみる、それだけでも価値のある行動だと思います。

藤石:カクヨム甲子園は、最も簡単に、実際の作家さんや編集者さんに、自分の作品を審査してもらえる機会です。カクヨムに小説をあげることは匿名でできますし、「とりあえず出してみるか~」と気軽に応募して問題ありません。実際私も、そのくらいの軽い気持ちで応募しました。ぜひ応募してください!

三嶋:自信がない人ほど、ぜひ参加してほしいと思います。自分は駄作だと思っていた作品が、他者から見れば傑作だったという事態が、小説の世界では頻繁に発生します。逆も然りです。
小説は自分の主観では測れません。つまり、その作品、受賞するかもしれません。ぜひ参加してみてください。


緑山:書き始めなきゃ書き切れない。走り始めなきゃ辿り着けない。夢は見るだけじゃ叶わない。


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