【応募者必見】創作のお悩みを解決!プロ作家・羊太郎先生に聞いてみた~後編~|「カクヨム甲子園2022」応募者応援特別企画

夏恒例、高校生限定の小説コンテスト「カクヨム甲子園2022」の作品の応募受付は7月15日から開始します。

「カクヨム甲子園に応募してみたいけど、小説を書くのにちょっと悩んでいて…」という方、いませんか?
「カクヨム甲子園2021」授賞式では、受賞者からのそんな創作に関する悩みや質問を羊太郎先生にひとつひとつ丁寧にご回答いただきました。
今回は、その模様を特別にお届けする後編。
きっとあなたが抱えるお悩みの答えが見つかるはず。
最後までお見逃しなく!

▼質問のラインナップはこちら
推敲の仕方
質問内容:推敲する際に意識していること、推敲のコツなど
キャラクターの作り方
質問内容:キャラクターの名前の決め方、印象に残るキャラクターの作り方など
スランプ脱出方法
質問内容:どうしても書けない・書きたくなくなったときの対処法、作品が本当に面白いか自信がなくなり書けなくなったときの対処法など

▼前編はこちら

kakuyomu.jp


 

推敲の仕方

受賞者:今までぶっつけ本番で書いていたのですが、これからは推敲したいと思っています。推敲のコツを教えてもらえますか?

羊先生:一番重要なのは、書いた文章を2、3回読み直すことですね。黙読で2、3回読み、描写が足りないと感じた部分に表現を付け加えていきます。そのあと音読してみて、読者が読みにくい文章になっていないかを確かめます。音読してすらすら読める文章は読者にとっても読みやすいものですよ。慣れてくると音読しなくても黙読だけでささっと直せるようになると思います。ぜひ試してみてください。


受賞者:推敲をする際に最も意識されていることは何ですか?

羊先生:推敲では、文章が読者にとって読みやすいかどうかを意識して直しますね。どんなにいい文章を書いたとしても読者に「わからない」と言われてしまったらおしまいです。説明くさくて無理やりな構成になっているときは筆も止まってしまいますから、まずは読者にとって読みやすい文章にするというところを第一に考えて、こだわっています。


受賞者:頭の中の想像をより繊細に表現するにはどんなことに気をつけたらいいですか?

羊先生:これは難しいですね……。初稿の段階で、自分の想像を全部完璧に表現できている、ということは僕もありません。初稿の段階では7〜8割くらいを目指して情景や心情を描いて、推敲で10割に近づけていく。推敲をするころには全体像が見えてきて頭の中の想像もより鮮明になってくるので、いろいろな表現の案が浮かんできます。書き直して、書き直して、どんどんイメージに近づけていく。僕はそんな風に泥臭くやっています。


受賞者:私は自分の作品を客観視することが苦手です。ひとに読んでもらったほうがよいと思われますか。

羊先生:読んでくれるひとがいるのであれば、読んでもらったほうがよいですが、読んでもらわなくてもいいと思います。「客観視できていない」自分を自覚できているなら大体大丈夫です。


 

キャラクターの作り方

受賞者:読者に強い印象を与えるような濃いキャラクターを何人も生み出すためには何を心がけるとよいですか?

羊先生:皆さんには、漫画、アニメ、ゲームを問わず、今までに出会った様々な作品の中で好きなキャラ、嫌いなキャラ、印象に残ったキャラがいると思います。そこで、そのキャラがどうして好きなのか、嫌いなのか、印象に残るのかということをよく考えて分析するとよいです。作品をたくさん見て分析してメモしていると、それを分解して再構成することで自分だけのキャラクターを生み出せるようになります。やっぱり常日頃インプットを高めることが重要ですね。


受賞者:読者を最後まで惹きつけ続けるヒロインを描きたいのですが、どのようなことを意識するとよいでしょうか。

羊先生:これも難しい問題ですね……。キャラクターの目的や信念、性格、立場、行動原則などの基本的な設定を書く前の段階で固めることを意識するとよいと思います。それらをちゃんと固めておけば、そんなにキャラクターがぶれることもないです。物語の中で行動原理が変わっていくことがあったとしても、基本的なところが固まっていれば大丈夫ですよ。僕も四苦八苦して、どういうヒロインに読者が惹かれるのか、研究しています。


受賞者:ご回答いただいたように、キャラクターは「独立した人格」として絶対にぶれてはいけないとは思います。しかし、その一方で、読者が惹かれるヒロインには安定的ではない「はかなさ」があるのではないかなとも思います。羊先生はどう思われますか。

羊先生:キャラクターのブレとして受け止められかねない部分をはかなさとして伝えるのはなかなか大変だとは思いますが、どうすれば読者に伝わるのか、突き詰めて調べていくのはよいと思います。テーマをもって挑戦すること自体がすばらしいと思いますね。一方で、はかないヒロインだけでなく、元気いっぱいなヒロインを魅力的に感じるひともいます。理想のヒロイン像を追い求めすぎると、視界がせまくなってしまいますので、いろいろな魅力・書き方の方法があることも頭に入れておくとよいと思います。


受賞者:小説を書くときにキャラクターの行動やセリフを考えるのですが、そのときに「あのキャラクターにああいうことを話させたい」という気持ちがどうしても強くなってしまいます。改めて読み直すとキャラクターが話しているというより、作者にキャラクターが話させられているように感じてしまいます。そのようなことはプロの作家さんでもありますか。

羊先生:それはやっぱりありますね。ストーリー展開のためにキャラクターを動かしてしまっているということは、どうしても出てきてしまいます。その部分は大体編集の方もつっこんできますね(笑)。キャラクターを作家の都合で動かしてしまうのを避けるためには、先ほどもお答えしたように、キャラクターをしっかり固めておくことが重要です。性格や行動、これまでの人生、目的を決めて、根幹をずらさないようにします。そうすればずれてしまうことはなくなってきます。と言いつつも、僕もいつも頭を悩ませる問題ですね……。キャラクターの人格が作者の人格と重なっている場合は特に難しいです。


受賞者:キャラクターの名前や地名はどのように決めていらっしゃいますか?

羊先生:作家によって千差万別ですね。何も考えずに適当につけるひともいます。少なくとも僕は「名は体を表す」という言葉があるように、どこかしらキャラをイメージして名前をつけるようにしています。「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」では「イヴ=イグナイト」という魔術師がいます。「イグナイト」は「イグニッション(点火・発火)」からきていて、どことなく火をイメージさせる言葉を使いました。また、地名も雰囲気を出せるよう、造語なり既存の地名なりを出すように心掛けています。


受賞者:私はキャラクターの名前や地名にこだわりを持つタイプで、その作業にかなりの時間を使ってしまうのですが、さくさく決めたほうがよいのではと悩んでいます。羊先生は名前をつける作業にどのくらい時間を使っていますか。

羊先生:名前はやっぱり自分の執筆のモチベーションに関わるので、納得いくまで考えます。キャラは自分の子供と同じように愛着がわくもので、作家にとって重要なものだと思います。名づけへのこだわりは、読者にもなんらかの形で届いているものだと僕は信じています。名前にこだわることはすごくいいことだと思いますよ。


 

スランプ脱出方法

受賞者:筆が止まってしまってどうしても書けなくなってしまったり、書きたくなくなってしまったりしたことはありますか。

羊先生:筆が止まってどうしても書けなくなってしまったということは僕もよくあります。対処法として、僕がやっているのはごはんを食べてお風呂に入って散歩してゲームをして、書きたくないときは書かないということですね。書けないときもいい機会だと思って、インプットの時間にまわします。最新の漫画を読んだり映画を見たりなど、インプットしていると脳がアップデートしていくので、また書きはじめる原動力になります。要するに気分転換ということですかね。


受賞者:長編を書いていると途中で「本当にこれは面白いんだろうか?」と筆が止まることがよくあります。羊先生にはそのような経験はありますか?

羊先生:僕もよくあります。ただ、この場合は、書きたくないから筆がとまっているのか、書いている作品に問題があるのか、見極める必要があります。「なぜ面白くないのか」、「なぜ自分が疑問に思ってしまうのか」ということを読み返して考えるということが重要です。必ずどこかに問題点があるはずなので、何度も読み返して考えるしかないです。灯台下暗しで根本的な部分が問題であることがあり、その場合はすべて書き直すことになってしまいます。そこで勇気を持って見直すことが重要ですね。


羊先生からメッセージ

羊先生:今回、審査に参加させていただきましたが、本当に素晴らしい体験でした。皆さんの書く文章は迸る若さと勢いで溢れていて、パワーが凄まじかったです。応募作品を読みながら「この子達がいつか同じ舞台に立ったとき、僕は対抗できるんだろうか!?」と、内心ドキドキしていました(笑)。「カクヨム甲子園2022」に挑戦される皆さん、月並みですが、頑張ってください。先達の一人として心から応援しています!


羊先生、ありがとうございました!
いただいたアドバイスを実践すれば、もう一段レベルアップした小説を書けるようになるはず。
自信を持ってぜひカクヨム甲子園にご応募ください!


「カクヨム甲子園2022」の応募受付は、
7月15日17:00から開始です!

▼「カクヨム甲子園2022」特設サイト
kakuyomu.jp


 羊太郎
 ライトノベル作家。第26回ファンタジア大賞の大賞受賞。
 2014年7月19日、作家デビュー。作家歴6年。
 主な著作は『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』、
 『ラストラウンド・アーサーズ』、『古き掟の魔法騎士』。

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