第32話 タッパー

 そして、そんな地獄絵図を作り出した当の本人である響華はと言うと……


「これで入るようになるんじゃないですか?」


 そんなことを言いながら、ミンチになった悪魔の肉塊を空間収納に入れようとしていた。


 コメント

 ・何か変わったのか……?

 ・入らん気がするけど……

 ・どうなんだ?

 ・狂姫のしたい事がよくわからんな

 ・狂姫のしたい事が分からないことなんていつものことだろ

 ・いつものこと(配信二回目)


「あれ?入るようになると思ってたんですが、まだ入りませんね」


 やはりと言うか、空間収納に入らない肉塊を不思議そうに見つめる響華。


「入らないのはまだ悪魔が生きているからだと思っていたんです。なので確実に殺すためにミンチにしたんですが……」


 響華は自身の予想が外れてしまったことに、少し落ち込みながらそう言う。


 コメント

 ・なるほど……

 ・空間収納には生きてる生物は入らないもんな

 ・納得したけど……

 ・じゃあ、何でこれは空間収納に入らないんだ?

 ・よくわからんな


(このミンチからは魔力の反応も感じないですし、確実に死んでいるはず……。他に何か空間収納に入らない原因があるんでしょうか?)


 響華は頭を悩ますが、中々良い考えは浮かんでこない。


(悪魔という種族に対して私達は何も知りませんし、一旦はそういうものだと考えて行動する方が良さそうですね)


 響華は一度そう結論付け、次の行動に移ろうとする。


「とりあえず、この肉塊を私は空間収納に入れられないということが分かったので、空間収納に入れるのとは別の方法でこのミンチを持って帰り、協会に提出したいんですけど……、どうやって持って帰ればいいと思います?」


 そう響華が言うとコメント欄では……


 コメント

 ・空間収納に入らないなら手で持っていくしか無いでしょ!

 ・流石に手で持って地上に行くのは大変過ぎないか……?

 ・探索者協会の人に手伝ってもらうとか?

 ・それだ!

 ・確かにそれが一番手っ取り早いな!


「なるほど、確かに探索者協会の人に来てもらった方が早く持ち運びが終わりそうですね」


 コメントに納得し、探索者協会の人に来てもらうことを響華は決めた。


「ですが、一応このミンチの一部は持って帰っておきますか。その方が研究が早く進みそうですし」


 そう言って響華は空間収納からタッパーを取り出す。


「とりあえずはこれに入れておくことにします」


 そう響華は言いながら、タッパーの中に肉片を詰めていく。


 コメント

 ・何なんや、この風景……

 ・悪魔のミンチをタッパーに詰める女

 ・シュールだな……

 ・悪魔のミンチをタッパーに詰めるという行為をダンジョン内でしてるせいで、余計にシュールさを感じるw

 ・よく淡々と作業できるな……


「これだけ詰めれば、大丈夫ですかね」


 そう言って響華はタッパーに肉片を限界まで詰め、タッパーの蓋を閉める。

 かなり限界まで詰めたため、蓋が閉まりづらかったが、何とか閉めることはできた。


「よし、では早速探索者協会の人を呼んでくるためにも、一度地上に戻りましょうか」


 そう言って響華は残った悪魔のミンチを後ろにし、地上へと向かっていくのだった。

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