「狂姫」と呼ばれたダンジョン探索者、全力で高みを目指し続ける~もう既に最強なんですが……?~

ハゲダチ

第1話 配信者との出会い

『ダンジョン』


 それは100年前、世界中に突如として現れた、人類が未だ解明できぬ不思議な空間。

 ダンジョンが現れた当初は世界中が荒れに荒れたが、時間が解決するとはよく言ったもので、その荒れた環境に人類は徐々に適応していき、今では充分な法整備も進んだため、人々はダンジョンを資源と見るまでになっていた。


 ダンジョンに潜り、魔物を倒し、アイテムを手に入れて地球の資源や技術に貢献しようとする者を人々は『ダンジョン探索者』と呼んだ。


「ふぅ、やはり竜種との戦闘は学びになりますね」


 そして、自身の体の何倍もの大きさを持つ竜種の死体の前でそう呟くこの女もダンジョン探索者の一人だ。


 彼女の名前は白崎響華しろさききょうか

 身長170センチの綺麗な黒髪ロングとキリッとした切れ長の目、そして細身でありながらしっかりと鍛えられた無駄のない体を持ち、その見た目から日本人以外の血が混じっていると間違えられやすいがれっきとした純日本人だ。

 

 そんな響華は、今日も今日とてダンジョンに潜って魔物を狩り、その素材や魔石を売ってお金を稼ぐという生活を続けていた。


「さて、じゃあそろそろ帰ろうとしましょうか」


 響華がそう呟くと同時に空間収納のスキルを使い、竜種の死体を収納し、歩き出そうとしたその時、


「キャァー!!!」


 悲鳴が聞こえた。




 ◇


 side.配信者


「なんで……ワイバーンがここに……」


 コメント

 ・これヤバくねぇか!?

 ・椿ちゃん、逃げてくれ!

 ・急に画面が光ったと思ったら画面にワイバーンが映ってるんだが俺の画面バグってね?

 ・現実逃避すんな

 ・ワイバーンって八階層に出るような敵じゃなくねぇか?

 ・っていうかここ本当に八階層か?画面光ってから周りの雰囲気が変わってる気がするけど

 ・そんなことよりこれワイバーン相手にして勝てるのか?

 ・無理じゃね?椿ちゃんの探索者ランクって確かCランクだった気がするし

 ・ワイバーンってBランクの探索者が戦ってギリ勝てるかって相手だしなぁ

 ・俺、椿ちゃんが死ぬ姿見たくないから配信抜けるわ……


 私、桜木椿さくらぎつばきは人生の窮地に立たされていた。

 

 私はつい先ほどまでいつものように八階層で配信をしていたはずだった。

 だが、急に足元が視界を覆う程に光り、気が付けばワイバーンが目の前にいるこの状況になっていた。


 今、私の目の前にいる魔物であるワイバーン。危険度Bランクに位置する魔物で到底私では敵わない相手だ。


 武器を持つ手が震える。正直、諦めそうになる。だが私はまだこんなところでは死ねないんだ!


 そうして私が覚悟を決めて立ち向かおうとした時、


「ギャァアァ……!」


 空を飛んでいたはずのワイバーンの羽が────



「……は?」


 コメント

 ・何が起こった?

 ・椿ちゃんがやったのか?

 ・いや、椿ちゃんじゃワイバーンに攻撃が届きすらしないと思う

 ・ワイバーンの羽が突然消えたように見えるんだけど俺の画面バグってね?

 ・現実逃避すんな……でも本当に何が起こったんだ?

 ・いや、消えてない!切り落とされたんだ!


 よくよく確認するとワイバーンの羽は消えてはおらず、ワイバーンの近くで羽だけが宙を舞っていた。

 私がこの状況に困惑していると、前のほうから声が聞こえた。


「大丈夫ですか?困ってるように見えましたからとりあえず助けましたけれど」


 前から現れたのは黒髪ロングの綺麗な女の人だ。

 私は呆然としていたがハッとして目の前の人に話しかける。


「大丈夫ですけど……これはあなたが?」

「?はい、私がやりましたけれど?」


 コメント

 ・この惨状、このめちゃくちゃ美人なこの人がやったの?

 ・まぁ、状況的にそれしか無さそうだけど……

 ・いやいや、こんな芸当Aランクの探索者でもできないだろ

 ・確かに、それこそSの探索者でもなきゃ無理だと思うんだけど

 ・……待って、この人どこかで見たことある気がするんだけど?

 ・まさか……


「とりあえず、この魔物の口を塞いでもいいですか?」


 ワイバーンに目をやりながらそう聞いてくる目の前の人。


「あ、はい大丈夫です……」


 私がそう返答した瞬間、ワイバーンの首が跳ね飛ぶ。


 そうして「よし!」とつぶやくと目の前の人はこちらに向き直り話し始める。


「それであなたはどうしてこんなところにいたんですか?見たところあなたのレベルでは行けて上層ぐらいだと思うのですけど」

「まず、ここってどこなんですか?私、確か竜の巣窟の八階層に居たはずなんですが」


 私がそう訊ねると、目の前の人は首を傾げて衝撃の一言を放つ。


「ここ、竜の巣窟のですよ?」




「…………え?」




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