第14話 それぞれの視点
side.協会長
「おいおい……狂姫の奴、固有スキルを使いやがった。」
俺は愛奈が召喚した人形たちが一瞬で破壊されたのを見て、そう呟く。
「狂姫は固有スキルを使わなくても、Aランクの探索者くらいなら余裕で倒せる実力はあるからなぁ……それに愛奈は固有属性に頼るのはいいがそれで終わりじゃあ、Sランク探索者である狂姫と戦うには不十分だ。こりゃあ、勝負あったな」
俺はそう呟くと、二人の決闘の立会人としての仕事に取りかかるのだった。
◇
side.響華
(やっぱり愛奈ちゃんは強いですね)
私は愛奈ちゃんと戦っている内にどんどんと気持ちが昂っていくのを感じていた。
その勢いで私の固有スキルも使っていた。
『凶器の具象』、その効果は自身がその時に望む凶器を出現させるというもの。
本当はこの決闘で使うつもりはなかったが、予想以上に愛奈ちゃんが強かったので使ってもいいと判断した。
(楽しい!楽しいです!!)
私は、この感情を心のどこかで抑えていたのかもしれない。
だが、一度蓋が外れてしまうともう止められなかった。
(もっと……もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと!もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと戦いたい続けたいです!!!)
そうして私は、愛奈ちゃんの召喚した人形を全て壊す。
「愛奈ちゃん、あなたはまだ戦えるでしょう?」
次の瞬間にはいつの間にか私は愛奈ちゃんの後ろにいて、『凶器』を振るう。
───ズガァァン!!
そんな音と同時に愛奈ちゃんは壁まで吹き飛ばされる。
(あぁ……楽しい)
私はそんな感情に包まれながら、愛奈ちゃんに追撃を加えようと距離を詰めていくのだった。
◇
《本文》
「がっ……!」
響華の一撃によって壁に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
愛奈は必死に立ち上がろうとする。
だが、今の一撃が効いたのか中々立ち上がることができない。
(これが響姉の固有スキル……強すぎる……)
愛奈は身代わり人形という魔法を使ってダメージを軽減していたのだが、
(身代わり人形を使ってもダメージが完全に無くせず、逆にこっちにダメージが飛んでくる……すべてに置いて響姉に負けてる……)
愛奈は内心そう思っていた。
そんな愛奈に向かって響華がゆっくりと近づいて行く。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか」
そう言った次の瞬間には、既に響華は愛奈の目の前にいた。
「くっ……!?」
愛奈は相変わらず響華の動きを捉えることが出来ない。
(どの魔法を使えば、戦況を変えられる!?)
だがそんなことを考えているうちに、いつの間にか響華は消えており、腹部に強い衝撃が走る。
「ぐはっ……!」
そしてそのまま壁まで吹き飛ばされる。
その衝撃で身代わり人形は破壊されてしまった。
「はぁ……はぁ……」
愛奈はゆっくりと立ち上がろうとする。
しかし、ダメージが大きいせいかなかなか立ち上がることができない。
そんな状態の愛奈に向かって響華は再び武器を振り上げる。
「これで終わりです」
そうして響華が武器を振り下ろそうとした瞬間、
「そこまで!」
立会人の協会長が止めに入る。
「この決闘は狂姫の勝ちで終わりだ。これ以上やったらどっちかが死ぬぞ?」
協会長はそう言って、二人の決闘を終わらせる。
「そう……ですか」
そんな協会長の言葉を聞いて響華は攻撃の手を止める。
(仕方ありませんね……)
響華は少し悲しげな表情をするのだった。
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