第26話 悪魔

「悪魔……ですか」

「うん、そうだよ。悪魔だ」


 その自身を悪魔と名乗るそいつは何がそんなに楽しいのかはわからないが、響華に向かって笑いながらそう答える。


 コメント

 ・悪魔?

 ・魔物とは何か違ったりするのか?

 ・現時点でも結構魔物とは違うけど……

 ・喋るだけの魔物じゃないのか?

 ・喋るだけでも凄いんだけど……


「魔物とは違うんですか?」


 コメントにもある疑問を響華は訊ねる。


「あんな知能すらない奴らと一緒にしないで欲しいね」


 そう言ってそいつは不愉快そうに顔をしかめる。


「それに僕らは、魔物のように復活したりもしないし、自身と同じ個体が別にいたりしない。それに寿命も無いし、老化もしない。僕たちは唯一無二の存在なんだ」


 自慢気にそう話すその悪魔と名乗るそいつを横目に響華は考える。


(この悪魔と名乗る存在……、本当に魔物ではないようですね。雰囲気や魔力の流れが魔物とは明らかに違いますし……。かといって人間とも魔力の流れが違うんですよね……。まぁ、明らかに見た目からして人間ではありませんでしたが……。でしたら本当に悪魔っていう種族が出てきたんでしょうか?)


 響華は悪魔と名乗る存在の見た目と、その纏っている雰囲気からそう考える。


(まぁ、考えるだけ無駄ですね)


 そう結論付けた響華は、その悪魔と名乗る存在と対峙する。


「一応最後に聞いておきますが、人間ではないんですよね?」

「うん、僕は悪魔だよ」


 響華の問いにその悪魔と名乗る存在はそう答える。そしてそんな悪魔の返答を聞いた響華は……


「なら良かったです」


 そう言った瞬間、響華は瞬時に悪魔の背後に回り、刀を振るう。


「グッ!?」

「人間じゃないなら、殺しても良いんですから」


 悪魔は油断していたのか、回避すら出来ずに響華の攻撃を受ける。そして刀で斬られたその傷口から紫色の血液が溢れ出す。


 コメント

 ・えぇ……、いきなり殺しにかかるじゃん

 ・人間じゃなかったら殺しても良い理論、イカれてて草

 ・まぁ、明らかに人類の敵っぽいし、いいんじゃない?

 ・適当すぎん?

 ・探索者協会が決めることなんだろうけど、この状況じゃなぁ……

 ・戦闘中だしね


「痛いなぁ……、僕じゃなかったら死んでたよ?」


 悪魔は自身の傷を触りながらそう言う。


(防御の面でもそれなりに優秀そうですね)


 響華は悪魔の言葉を完全に無視し、そう分析する。

 そして悪魔はそんな響華を見て、


「君……、もしかして僕の話聞いてない?」


 と、聞いてくるがそれにも反応しない。

 それどころがその刀を構えて臨戦態勢に入るほどだ。


「はぁ~……まぁいいや」


 悪魔はそう言って自身の傷口に触れる。すると次の瞬間、響華が付けたはずの傷が完全に無くなっていた。


「!?」


 これには流石の響華も驚きを隠せない。まさか、再生するとは思わなかったからだ。そして悪魔はそんな響華の表情を見て愉快そうに笑う。


「驚いた?驚いたよね?まぁ、どんな能力かは言わないけど!」


 悪魔が小馬鹿にしたように言うと、今度は響華の方が笑みをこぼした。それは強者を見つけた獣のような笑みだった。


「そうこなくては、面白くないですからね!」


 そしてそのまま刀を構えて再び臨戦態勢に入るのだった。

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