第34話 二人目のSランク探索者

 配信を閉じた後、探索者協会の人が響華に話しかけてきた。


「それでは、今後の予定についてなのですが……」


 探索者協会の人が話す今後の予定について耳を傾ける。


「まず、響華様が回収した素材などの提出のために一度探索者協会の本部の方まで来てもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」

「構いませんよ」


 探索者協会の職員に響華はそう答える。


「ありがとうございます。次にまだダンジョンに残っている悪魔と言う種族のミンチの回収についてですが、それはこちら側が用意した探索者さん達に回収してもらうので、響華様は早速探索者協会の本部の方に向かっていただくことになっているのですが……」

「いいですけど、大丈夫ですか?魔物は全て殲滅したので、残る魔物は少ないとはいえ、相手は竜種ですからBランクの人やCランクの人では、危ないかもしれませんよ?」


 響華がそう不安気な表情で話すと、職員は笑顔でこう答える。


「ご安心ください。回収用の人員として用意している探索者の方々は皆Aランク以上の実力を持っている人で構成されていますから。響華様のご友人の方も参加されてますよ」

「友人ですか?」


 響華がそう疑問の声を口に出すと、後ろの方に控えていた探索者らしき人達の中から聞いたことのある声が聞こえた。


「響姉~!お疲れ様~!配信見てたけど、めちゃくちゃ凄かったよ~!」


 そう言って手を振ってくるのは、愛奈だった。愛奈は響華に近づきたそうにしていたが、邪魔になると思っているのか、遠目にこちらを見ている。


「友人とは愛奈ちゃんのことでしたか」

「はい。次期Sランク候補と名高い愛奈様がこの探索隊に入りたいと志願してくださったので、今回の回収班に参加していただいてます」


(愛奈ちゃんなら竜種ぐらいでしたら余裕で勝てるでしょうし、とりあえずは安心できますかね)


「それだけでなく、今回はSランク探索者である時葉ときは 凜音りおん様も参加してくださってるんですよ」

「凛音さんがですか!」


 時葉凛音。響華と同じ、日本に5人しかいないSランク探索者の内の1人であり、『時』の固有属性を持つ、女性探索者である。

 時の固有属性という分かりやすく、尚且つ強力過ぎる能力のため、一般人からの人気は絶大だ。


 そんなSランク探索者である時葉凛音がいると知り、響華は少し興奮した様子で協会の職員に頼みごとをする。


「凛音さんには前から決闘を申し込んでいるんですが、何故か断られてしまうんです!ですので協会の方から決闘しませんか?と打診しておいてくれません?」

「流石にそれは……。お忙しい方ですので、返事は期待しない方がいいと思います」

「そうですか……残念ですが仕方ありませんね」


 そんなことを話していると、回収班の人達は準備が終わったのかダンジョンに向かい始める。その様子を見て、協会の職員の人は、響華に話す。


「では、そろそろこちらも出発しましょうか。ご友人の方や凜音様とも積もる話があるとは思いますが、また別の機会にしてくださると嬉しいです」

「わかりました」


 響華はそう返事し、協会が用意した車に向かっていくのだった。

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