第11話 愛奈の心情
その後、響華がスキルや魔法の補正なしで動いていたのを聞いた視聴者がコメント欄でいろいろ騒いでいたが、響華は水竜も倒して他にやることも無かったので、そのまま配信を終了した。
「今日の配信はとりあえず成功だね!」
愛奈が響華にそう嬉しそうに話しかける。
「まぁ、これからも配信するかはわかりませんが、初配信にしては確かによくできた方だと思います」
「だよね!」
愛奈はニコニコしながら答えた。
そして、それから少しの間、響華と愛奈は雑談しながら帰還結晶を使うのに適切な場所に歩いていく。
「そういえば、今日配信で見せてくれたあの魔法、凄いとは思うけど使う機会あるの?響姉って普通に魔法斬れるし、使う機会ないとも思うんだけど」
愛奈は配信の内容を振り返って疑問に思ったことを響華に訊ねる。
響華はその愛奈の問いに、少しも考える素振りを見せず答える。
「確かに普段から使うことは無いかもしれません。ですがそれが新たに私の力になってくれるかもしれない魔法を習得しない理由にはならないでしょう?」
「それって、今後も強くなるために覚えるってこと?」
「そうですよ」
響華は迷い無くそう答えた。
響華にとってはそれが当たり前なのだ。
強くなろうとするのは生きていく上で当然だし、例え自分が現在の人類の中で最高峰の実力を持っていたとしても、強くなろうとするのは変わらない。
「響姉って、強くなるのにはいつだって全力だよね。響姉に助けられてからずっと響姉に追いつくために頑張ってるのに全然追いつける気がしなくて、少し自信なくしちゃうな……」
愛奈は響華に聞こえないくらいの小さな声でそう呟く。
「ん?何か言いましたか?」
「ううん、何でもないよ!」
「そうですか?ならいいのですが」
そうして話しながら歩いているうちに二人は帰還結晶が使える場所にたどり着いたので、そのまま帰還結晶を使い、地上に戻った。
「じゃあ今日はこれでお別れですね」
「うん!明日の決闘は絶対に負けないんだから覚悟してね!」
「はい、楽しみに待ってます」
愛奈は響華にそう宣言して、帰っていく。
そして、響華も愛奈と別れた後は、自身の家へと帰っていくのだった。
◇
side.愛奈
「はぁ……」
響姉と別れた後、私は家に帰ってお風呂に入りながらため息をつく。
「やっぱり響姉は凄いなぁ……あんなに強いのに全然驕らないし。普通Sランク探索者になったら少しは調子に乗ったりするものだと思うんだけど……」
愛奈は先ほど別れた響華のことを想う。
「ずっと前から努力を欠かさず、自分を高め続けるなんて普通はできないよ……」
そんな響華がとても凄い存在に思えて仕方がなかった。
「自分が探索者になったばかりの頃、『固有属性』を手に入れて、自分は特別なんだと思ってた。だけど、自分が勝てない魔物に襲われているところを響姉に助けられてから、それが凄く脆い勘違いだってわかった」
愛奈は自分の気持ちを吐露する。
「響姉に助けてもらって、それから私は強くなろうと頑張ってきたけど、どうしても私は響姉には届く気がしないよ……」
そう話す愛奈の顔はとても悲しそうだった。
だが、すぐにその顔は決意を固めたような顔に変わる。
「それでも、もう昔みたいに惨めな思いをしたくないし、響姉に守ってもらうだけなんて嫌だ!私は響姉の後ろじゃなく、隣に立ちたいんだ!」
愛奈は改めて明日の決闘に向けて決意を固めた。
そうして、愛奈のお風呂タイムは終わり、寝る準備をしてベッドに入る。
「だから絶対に明日は響姉に勝ってみせるんだから!」
愛奈はそう言って決意を胸に眠りにつくのだった。
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