第18話 地獄

 それから何とか配信の設定をギリギリ自分で出来るぐらいには椿に指導してもらった数日後、響華は『地獄』のダンジョン前にやってきていた。

 

 響華は今日までにダンジョンに入るための準備は万端にしており、協会長から探索者カードも受け取り終えている。そして愛奈にも「探索禁止指定ダンジョンで配信するために初配信で使ったアカウント使いますね」とメールを送っており、抜かりはない。


「それにしても、やはり探索禁止指定ダンジョンなだけあって警備が厳重ですね」


 響華は『地獄』のダンジョン前に立ちながら一人そう呟く。


 基本的にはどのダンジョンの入り口にも警備員が立っているのだが、探索禁止指定ダンジョンである『地獄』はその警備が他のダンジョンよりかなり厳重になっており、ダンジョンの入り口の前にある詰所には四人の警備員がいた。


 そしてその一人一人がそれなりの強さを持っているように見え、響華は感心する。


 そんな感じで詰め所にいる四人の方へ歩いていると、詰め所に居る人も響華の存在に気付いたようで、警備員もこちらに向かって歩いてくる。


「君がSランク探索者白崎響華で間違いないか?」

「はい、私がそのSランク探索者の白崎響華で間違いないですよ」


 そう言って響華は探索者カードを警備員の人に渡す。警備員の人は探索者カードを受け取ると、他の詰め所に居る警備員に確認をするように指示をする。そして少し経って確認が終わったのか響華の方へと向き直る。


「確認した、このダンジョンに入って問題ない」

「それは良かったです」


 響華はそう言ってにっこりと笑う。


「ではもう行ってもいいですか?」

「ああ、大丈夫だ」


 その返事を聞くと響華はとうとう探索禁止指定ダンジョン『地獄』 に入っていくのだった。



 ◇



「ここが探索禁止指定ダンジョンに選ばれている『地獄』ですか」


 コメント

 ・まさか探索禁止指定ダンジョンの中を見れるとは……

 ・上位の探索者でも『地獄』の中を見たことない人の方が多そうだし貴重な体験だ

 ・でもあんまり他のダンジョンと見た目は変わらないな

 ・そんなもんなんじゃない?

 ・油断してると、ここで全滅したSランクパーティーみたいに死にそうだが……

 ・狂姫が死ぬところなんて想像できないんだけど……


 響華は『地獄』の中に入った後、すぐに協会長との約束であった配信を始めた。

 探索禁止指定ダンジョンの中を見れるということで、初配信の時よりも同時接続数が格段に増え、コメントもわいわいと騒いでいた。


「私も死ぬときは普通に死にますよ。人ですし」


 コメントを見ていた響華がコメントに対して反応を返す。


「でもまぁ、私は寿命では死にたくありませんね」


 コメント

 ・何で?

 ・寿命で死ねるのは幸せなことじゃないか?

 ・探索者やってて寿命で死ねるのはめちゃくちゃ幸せなことだと思うけど……

 ・自分なら寿命で死にたいって思うけどな

 ・理由を聞きたい


「だってそんな最後なんの面白みもないじゃないですか。そんな死に方より強敵と戦って死亡のほうが絶対に楽しいですし」


 コメント

 ・狂姫らしいな……

 ・まぁでも、探索者ってそんなもんなのかな?

 ・いや、そんなことは無いと思うが……

 ・狂姫の死生観がイカれてるだけだろ


 そんな風にコメントと雑談しながら響華は『地獄』を進んでいくのだった。

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