第5話 知り合いのAランク探索者
次の日、響華は昨日と同じように竜の巣窟に潜っていた。
(確か、竜の巣窟の最下層に出てくるボスは全部で四種類だったはずだったので、あと二種類でコンプリートですね)
竜の巣窟の最下層に出てくる魔物は火竜、水竜、風竜、土竜の四種類になっている。
この四種類の竜種が完全ランダムで出てくるので普通のボスより対策がしにくくなっている。
このランダム性だけでAランクのパーティーでも挑もうとしないほどにこのギミックは厄介なのだ。
(一昨日と昨日は出てくる竜種に被りが無かったのでよかったのですが、流石にそろそろ被りも出てきそうですね……、出来れば被りなく最短の四日で竜の巣窟のボスをコンプリートしたかったのですが……)
そんな厄介なランダム性に対して響華は一切気にせず、今日も今日とて最下層まで魔物を蹴散らしながら爆速で進んでいく。
響華が唯一気にしているのは一昨日と昨日倒した火竜と水竜がでてきてコンプリートするまでの時間が長くなることだけだ。
あと途中何人かの探索者が響華とすれ違うのだが、相手はこちらの姿が早すぎて視認できていないため相手は「なんだ!?」という反応はするが何が通ったかは理解できていない。
響華は弱い人に興味はないので危険に陥っている人がいない限りはスルーしている。だが逆に危険に陥っている人がいたら昨日みたいに助けるようにしている。
響華自身は別に助けなくても良いと思っているのだが、Sランクの探索者は素行をよくしていると政府に対してある程度融通が効くようになる。
そのため響華は政府にしているあるお願いを叶えてもらうために善行を積んでいるのだ。
(それに助けた探索者が将来強くなるかもしれないですしね)
昨日助けた椿なんかは特にポテンシャルが感じられたから響華はこれからの椿に対してそれなりに期待している。
そんなこんなで響華は魔物を蹴散らし続けながら走り続けた結果、最下層に続く階段のところに着いた……のだが。
(階段前にいるあの子は……)
響華はスピードを落としてその人影に向かって歩いていくが、その人影もこちらに気付いたようでこちらに向かって走ってくる。
「響姉!」
「愛奈ちゃんじゃないですか、こんなところでどうしたんですか?」
「昨日、椿って人の配信で響姉がここにいることが分かったから会いに来たんだよ!」
そう笑顔で話しながら響華に抱き着く小柄な女の子。
この女の子の名前は
史上最年少の16歳でAランク探索者になり次期Sランク候補だとも言われている逸材だ。
愛奈が探索者になったばかりの頃にピンチだったところを響華が助けてから、響華のことを響姉と呼んで実の姉のように慕っている。
「というかあの椿さんの配信見てたんですね、あんまり愛奈ちゃんが配信を見ているイメージが無かったので意外でした」
「いや?普段は時間がもったいないから配信は見てないんだけど、トゥイッター見てたら響姉の情報が流れて来て、そのまま椿って人の配信にたどり着いたんだよね!」
そう元気よく答える愛奈。
「それでどうして私に会いに来たんですか?私に何か用があるなら連絡してくれればよかったと思いますが」
「だって響姉全然スマホ使わないじゃん!私が一か月前に送ったメールとかまだ既読ついてないんだよ!?」
愛奈がそう叫ぶと、響華は「え?」と言ってスマホの画面をつけた。
そこには一か月前の日付に『愛奈:やっほー響姉!元気?』というメールが届いていた。
響華はそれを見て冷や汗を流す。
「あの、なんというか……すみません?」
「なんで疑問形なのさ!もう!」
頬を膨らませて怒る愛奈。しかしすぐに気を取り直し、本題に入るのだった。
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