第6話 固有属性と固有スキル

「それで本題なんだけど、あの時の覚えてる?」

「あなたがBランクに昇格した時にした約束でしたら覚えてますよ、私もずっと楽しみに待ってたんですから、もしかしてもう準備が出来たんですか?」

「うん、だから連絡したんだけど、どこかの誰かさんが全然メールを見てくれなかったから……」

「それに関しては本当にすみませんでした」


 申し訳なさそうに頭を下げる響華。

 その反応に満足したのか笑顔で話を続ける愛菜。


「あと探索者協会に明日を使うための予約もしといたから!」

「明日なんですね、てっきり今日だとおもいましたが……」

「今日、響姉と会えるかわからなかったし、念の為明日にしとこうと思ったんだよね」


「なるほど」と思いつつ、それじゃあ今日はどうしようかと響華は考える。


(明日、約束を果たすのならあまり一緒にダンジョンに潜りたくないですし、かといってこのまま別れるのを愛奈ちゃんが許すとは思えないですし……どうしましょうか……)


 そうやって響華が悩んでいると愛奈が一つの提案をする。


「それでさ!私一つやりたいことがあるんだよね!」

「やりたいことですか?」

「うん!あの椿って人がしてたみたいに響姉と一緒に配信してみたい!」

「私と一緒に配信ですか……、ですが配信の内容はどうするんですか?このままダンジョンに潜ってあなたが戦うのなら明日の約束に支障が出ると思いますし……」


 響華は明日の約束をかなり楽しみにしているので、少しでも明日の約束に支障が出るのなら配信を拒否しようと思っていたのだが……。


「別に大丈夫だよ!どうせ響姉、一人で五十階層のボス倒しちゃうでしょ?」

「それは、そのつもりですが……」

「それなら響姉に私の手札を見せることもないし、それに私は響姉のサポートの方に回るから!それだったら明日のに何の支障も無いでしょ?」


 そう言い響華を説得する愛奈。


 そう、愛奈が響華とした約束というのは決闘のことだったのだ。


 愛奈は昔、「私と決闘して!」と響華に迫ったことがあった。

 その時は実力差もあり、なによりもまだまだ愛奈自身が持っている『固有属性』を使いこなすことが出来ていなかったため、響華はまだ決闘するには早いと思い、決闘を断っていたのだ。


 しかし響華はただ断るだけでなく、条件を付けていたのだ。

『Aランクに昇格して準備も整ったなら』と。

 Aランクに上がる頃には、愛奈が持っている固有属性も使いこなせているだろうという判断があってこその、この約束だ。



 あと先ほどから話に出ている固有属性についても説明しておこう。


 まず、探索者は初めてダンジョンに入った時に、稀にその人だけが持つことの出来る『固有属性』か『固有スキル』を獲得することがある。


『固有属性』とは基本属性の火、水、土、風の四種類以外の属性の事を指す。

 この基本属性は魔力を持つ探索者なら誰でも使用することが出来るが、固有属性の場合はその固有属性を持っている人しかその属性を使用することができない。


 固有属性にもさまざまな種類があり、『雷』というような想像しやすいテンプレのような属性もあれば、『石鹸』というような明らかな人工物の属性も出たりする。


 ちなみに実際に石鹸の属性を持つ探索者がいたのだが、その人は探索者を辞めて石鹸屋を開き大成功したらしい。


 そんな話は置いておいて次に『固有スキル』について説明する。

 固有スキルは固有属性と違い、あまり自由が利かない。


 固有属性は魔力さえあればその属性に関することは何でもできるようになっている。

 例えば雷の属性の場合、単純に雷を出すこともできるが、雷の速度で移動したり、雷の鎧を纏うこともできたりして応用が利く。

 しかし固有スキルの場合は応用が一切利かない。


 固有スキルはそのスキルに書かれている効果しか発揮することができないのだ。

 例を挙げるなら、『弱者の足掻き』というスキルがある。

 このスキルの効果は「自分が相手より弱い場合に限り、ダメージを半減する」といったような効果になっている。

 この効果を変えることは出来ないし、応用することもできない。

 そのままの効果を使うしかないのが固有スキルなのだ。


 さて、説明も終わったので、話を戻すのだが……。



「配信をするのはいいですけど、私配信に必要なカメラとか持ってないですよ?」

「大丈夫!私が配信に必要な機材系は持ってきたから!」


 そういって、空間収納のスキルから山のようにでてくる配信機材に響華は一瞬唖然としていたが、すぐに気を取り直し愛奈の手伝いをするのだった。


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