第4話 討伐型とドロップ型
その後は、響華は自身が持っていた予備の帰還結晶を椿に渡し、地上に戻っていた。
あと「そんな便利なものがあるなら最初から使えや!」と椿に思う人もいると思うが、帰還結晶を使うにはある程度の条件がある。
まずボス部屋では使用できない。響華が竜種を倒したあの部屋などがボス部屋になっている。
次に、今いる階層と帰還結晶に込められている魔力が釣り合っている必要がある。
もし、込められている魔力が強すぎると地上ではなく空に転移する可能性があり、逆に込められている魔力が低すぎると地上まで転移せず途中の階層に転移したり、最悪の場合地面に埋まる可能性が出てくるため、今いる場所に適した帰還結晶を使わないといけない。
そして椿がピンチだった時、椿自身が持っていたのは9階層用の帰還結晶だったのであの状況では椿が持ってきていた帰還結晶では込められている魔力が少なすぎて帰還結晶を使うことが出来なかったのだ。
さて、そんな誰かへの解説も終わったことで響華と椿は二人で一緒に探索者協会に訪れていた。
「響華さん、今日は本当にありがとうございました!」
椿が響華に改めてお礼を伝える。
「別に大丈夫ですよ、それでは失礼します」
元々椿と響華は探索者協会で別れることになっていたので、そのまま響華は椿と別れてカウンターへ向かっていく。
(今の椿さんにあまり魅力を感じませんが、本気で努力して強くなったならその時はぜひ……)
響華がほんの少し口を歪ませながら歩いているとカウンターの前に着く。
すると受付嬢が私に話しかける。
「ご用件は何でしょうか?」
「『討伐型』の素材の買い取りをお願いします」
「承りました、では奥の部屋へどうぞ」
そうして受付嬢に促された通りに私が奥の部屋へ入っていく。
奥の部屋は広い倉庫のようになっており、そしてそこには数人の人がいた。
「では、今日もお願いします」
そう言って私は空間収納のスキルで回収した首と胴体が綺麗に離れている竜種の死体を目の前に出す。
「昨日は水竜で今日は火竜か、相変わらず凄ぇな」
「ホントにな、4種類の竜種の中からランダムで出てくるせいで対策しにくいことで有名なあの竜の巣窟の最下層のボスを2日連続で倒すなんてな」
「まぁ、Sランクだったらそれぐらい普通なんかね」
それぞれが口々に言葉を吐き出しながら竜種の査定を始める。
「じゃあ、昨日と一緒でこの竜種一体丸々買い取りでいいんだな?」
「はい、それで大丈夫です」
竜種の素材に魅力を感じていない響華は今日倒した火竜を昨日の水竜と同じように全て売り払う。
「それよりお前さん、なんで討伐型の魔物なんて狩ってくるんだ?
「ホントにな、討伐型とか面倒なだけだろ」
「『ドロップ型』の魔物の方が持ち帰りの手間とか査定とかが無い分楽だしな」
響華が手間の掛かる討伐型の魔物を倒してくる理由に興味があるのかそんなことを訊ねる目の前の人達。
まず『ドロップ型』と『討伐型』の違いについて説明しよう。
まずドロップ型についてだがドロップ型の魔物は倒した後、死体が残らず代わりに何かアイテムがドロップするようになっていてそれが魔物を倒したときに発生する報酬になっている。
そして討伐型の魔物を倒したら、そのまま死体が消えずにその死体自体が魔物を倒した時に発生する報酬になっている。
ちなみにドロップ型と討伐型だと圧倒的にドロップ型の魔物の方が数が多くなっている。
「それで何で討伐型のほうを倒してくるんだ?」
改めてそう訪ねてくる査定のためにいる人達。
響華は何気なく答える。
「私は別に討伐型なのかドロップ型なのかなんて気にしてなんていないんです、私が見ているのはその魔物が強いかどうか、それだけですよ」
その響華の答えに査定のためにいる人たちは、ポカーンとしていたが響華は「質問にも答えたので失礼します」と言い残し去っていったのだった。
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