第30話 決着

(落ち着け、別に傷は代理で返すことが出来るんだ。どうやって攻撃したかは知らないが、一撃で死なない限り、僕は負けない!)


 そう考え、悪魔は代理の能力を使用する。

 そして……


「「ガアアアアアアアァァァァ!!??」」


 絶叫がこのダンジョンに響き渡る。

 

悪魔の能力である代理は確かに発動した。だが、その傷の痛みが響華と悪魔の両方を襲ったのだ。


 コメント

 ・は?何が起こった!?

 ・なんで二人とも叫んでんだ!?

 ・代理の能力で狂姫に傷を移してるけど何か悪魔に返ってない?

 ・悪魔に返ったと思ったら小人の方にも傷が移ってまた狂姫のところに傷が移ってるし……

 ・なんか悪魔の能力バグってね?

 ・確かに……


 まるで挑発するかのように響華はそう悪魔に言う。そんな響華の言葉に対し、悪魔は顔を歪ませながら叫ぶ。


「何をやったんだ!?僕に何をした!?」

「それは~、秘密ですよ♪」


 そう楽しそうに笑う響華。そんな響華の態度に悪魔はさらに怒りをあらわにする。


「クソッ!いいさ、もう一回やってやる!!」


 そう言って悪魔はまた能力を使おうとする。しかし……


「あれ……?なんで使えないんだ!?」


 そんな悪魔の疑問に響華は笑いながら答える。


「アハハハッ!!まさか自分の能力が制御できないなんて言いませんよね?そんなわけないですよね~??」


 そう煽るように言う響華に対して、悪魔はさらに怒りをあらわにする。


「何故だ!何故能力が使えない!?」

「どうしてでしょうかね~♪」


 そんな悪魔に響華は悪戯っぽく笑い続ける。そんな響華の態度に悪魔は苛立ちながら言う。


「チッ!まぁいいさ、腕の怪我自体は治ったからな!それに対してお前の傷は治っていない。能力を使わずとも、素の身体能力でお前を圧倒してやるよ!」

「アハハ!それは楽しみですね!」


 そんな悪魔に響華は笑顔でそう答える。


「では再開しましょうか!」

「あぁ!今度こそ、この僕がお前を殺してやるよ!」


 そして戦いが再び始まる……ことは無かった。


 なぜなら、悪魔の体が全身の骨がボキボキと折れ、立っていることもままならない状態だったからだ。


「は?なんで……」


 突然自分の体に起きた異変に悪魔はそんなことをつぶやいたが、そう呟いた次の瞬間には、頭蓋骨すらも形が歪み、砕け、喋ることすらできない状態となった。


 コメント

 ・は?何が起きたんだ?

 ・悪魔の体が急に崩壊し始めたんだが……?

 ・さっきまで普通に元気だったのに……?

 ・さっきの比にならないぐらいグロイな……

 ・閲覧注意だな

 ・それな……


 視聴者たちが困惑する中、響華が一人喋りだす。


「本当は戦いたかったんですけどね……。この傷では戦っても学びになることはなかったでしょうし、仕方なかったと思いますが……。少し勿体ないことをした気分になります……」


 そう響華が一人で喋る間にも悪魔の体は狂っていく。


 悪魔の意識は、悪魔の生命力が強いのが仇となり、この惨劇の中でも気を失うことは無い。ただ、動けない体で無慈悲にも自分の体が変化していくのを目の当たりにし続けなければならないという、地獄のような時間が続く。


 そして、悪魔の意識が無くなったのは、体の半分以上が肉塊へと成り果てた後だった。

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