お留守番編2
「え、どこに…」
てっきりお仕事が終わって帰ってきたんだと思ってたのに、またどこかへ行ってしまうなんて…。
「仕事。純怜が心配だから抜けてきたけど、大丈夫なんだったら戻るぞ?」
私のためにわざわざ大事なお仕事抜けて、様子を見に来てくれたんだ。気にかけてくれたことが、嬉しかった。
「う、うん。私のことは心配しなくても、大丈夫だから、お仕事頑張ってね」
凌久くんのために強がった。
本当は、そばにいて欲しいかったけど、これ以上凌久くんのお仕事を邪魔したくなかった。
「じゃ、行ってくる」
平気なフリをしたけど、雷の音がだんだん大きくなってきて、恐怖が再び襲ってくる。
「り、凌久くん、」
思わず凌久くんの名前を呼んでしまった。
「ん?」
「…ううん、やっぱりなんでもない」
本当はいてほしいけど、言えない。
「そ?じゃあ行くぞ」
「うん。行ってらっしゃい」
凌久くんの背中が遠ざかるのを見て、また一人になる恐怖が押し寄せる。
あと10分だけでもいいからいてほしいなんてそんなわがまま言えるわけなかった。
「もうちょっとしたら他のみんなが帰ってくるから、それまで我慢しなくちゃ、」
自分に言い聞かせるように呟いた。
自分を励まそうとするけど、心の中の不安は消えない。
なんか、さっきよりクラクラする…。
それに、雷もさっきよりも強い気がする。
恐怖と暑さで意識が朦朧としてくる。
誰かがそばにいてくれるだけで、安心できるのに。
「みんな...早く帰ってきて。やっぱり1人は怖いよ...」
こんなことを言ったところで、誰にも届かないのに、、
「やっと素直になった」
突然の声に驚いて振り向くと、そこには凌久くんが立っていた。
「え、凌久くんどうして、戻ったはずじゃ...」
「怖がってる純怜を置いて仕事するとか、そこまで鬼じゃねーよ。ほら、とりあえず水飲め」
お前の事だから水分補給忘れてそうだし。なんて言いながらペットボトルを手渡してくれた。
あぁ、さっきからクラクラしてたのはそのせいか。
私より私の事理解してくれてるんだなって思ったら、
「ふふっ」
凌久くんの優しさが嬉しくて、思わず笑ってしまった。
「何がおかしいんだよ」
彼の困惑した顔が可愛くて、さらに笑みがこぼれる。
「何だか嬉しくて。ありがとう」
凌久くんには分からないと思う。私が、どれだけ嬉しくて、ありがたいと思っているか。
「どういたしまして」
「あの、さ、凌久くん...」
言いたいことが、上手く言葉に言葉が出てこない。凌久くんに頼ることが恥ずかしいけど、勇気を出して言いたい。
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