感謝の気持ちを込めて…プレゼント編 3

怒られて当たり前。


そんな時だった、空気を読まずに電話が鳴った。


スマホの画面を見ると、


お兄ちゃんだ…。


「出な?」

と智哉さんが言った。


「聞かれても大丈夫ならスピーカーにして」

凌久さんが続けた。


そう言われたので、スピーカーにして電話に出た。


「も、しもし」

と私は震える声を我慢して答えた。


「もしもし純怜?」

お兄ちゃんの陽気な声が聞こえた。


「うん」


「渡せたのかなって心配になって、どう?ちゃんと渡せた?」


やっぱり、心配性。


「あ…うん」

私は咄嗟に嘘をついた。


本当はまだだけど、余計な心配かけたくなかった。


「喜んでくれただろ?そりゃそうだよな、あんなに真剣に選んでたんだもんな、あれ、純怜?聞いてるか?」


喜ぶどころか、そのせいで修羅場なんだよ。


なんで言えるわけないし、


「う、ん。聞いてるよ」


私も、みんなが喜んでくれると思って買ったのに。


こんなことになるぐらいなら、余計なことしなかったら良かった。


…泣くな。

泣いたら声が震えてバレる。


「何?なんで泣いてるの?まさか泣かされたのか?」

お兄ちゃんが心配そうに聞いてきた。


本当の事を言ったら心配性のお兄ちゃんの事だからどうせ、辛いならもう辞めなって、


余計にめんどくさい事になるだけだから。


「ち、違うよ。すごく喜んでくれたから嬉しくて、」


と私は必死に嘘をついた。


「そっか、やっぱり喜んでもらえたのか!良かったな」


とお兄ちゃんが安心した声が聞こえた。


良かった。騙せたみたいだ。


「うん、」


嘘をついた罪悪感を感じる。

けど、今は知らないふりをしよう。


「確認したかっただけだから、急に電話かけてごめんな」


「ううん、大丈夫だよ」


お兄ちゃんの声を聞けて、ちょっとだけ安心した。


「お母さんにも、ちゃんと大事にしてもらえてるみたいだから安心してって言っとくよ」


「ありがと」


「じゃあ、そろそろ切るね」

「うん、バイバイ」


お願い、切らないで。

その願いは叶わなくて、


あっけなく切れてしまった。


「どういうこと?」

と智哉さんが尋ねた。


「写真に写ってた人は私の血の繋がったお兄ちゃんなんです」


私は説明した。


「じゃあなんで友達と遊びに行くって嘘を…?」

陽向さんが不思議そうに尋ねた。


確かに。嘘をついたことが一番悪い。


「皆さんにはいつもお世話になってるので何かお礼がしたくて…だけど、男の人はどんなものが好きなのか分からなかったから、選ぶのを手伝ってもらってたんです…どうしてもサプライズにしたくて」


私は正直に答えた。


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